すべての登場人物の要素は自分の心の中にも存在する
初監督作『突風!ミニパト隊』(91年)はそんな環境で作りました。自分で言うのもなんですが、意外にも面白いものが作れたので、どんどん撮っていくようになりました。するとオリジナルビデオの中でもAクラスの「東映Vシネマ」で企画が通るようになったんです。

このときは、どこに行っても哀川翔を振り回していましたね。そんな僕に対して翔さんは、いつも対等でいてくれて、毎回ニヤリと笑ってオファーに乗ってくれたんです。キャリアもある売れっ子の“帝王”なのに、「え! 俺がこれやるの!?」と言いつつも、どんな無茶ぶりも応えてくれる。
その後、翔さんは、主演100作品目の節目となる『ゼブラーマン』(04年)の監督に僕を指名してくれました。振り返るとさまざまな縁に恵まれてきたというわけです。
今回の映画『でっちあげ 〜殺人教師と呼ばれた男』でもいろんな人間が登場しますが、すべての登場人物の要素は自分の心の中にも存在すると思っています。
誤解を恐れずに言うと、人間そのものがエンターテイメントであり、そんな「人間のおもしろいところ」を探しながら撮りました。人間にはそれぞれ、落ち度がありますよね。優柔不断なところがあり、その場を収めようと立ち回って悪いことが起きたり。
日本人にとっては日常的な言動でも、外国人が観たら、どう思うんだろう? とは思いますね。「この主人公は愚か者じゃないか」と観るかもわからない。今作を海外の方がどんなふうに観るのか楽しみです。
三池崇史(みいけたかし)
1960年8月24日生まれ、大阪府出身。米国アカデミー会員。CAA所属。横浜放送映画専門学院(現・日本映画学校)で学び、91年にビデオ作品で監督デビュー。『新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争』(95)が初の劇場映画となる。『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(2007)、『十三人の刺客』(10)でヴェネチア国際映画祭、『一命』(11)と『藁の楯』(13)でカンヌ国際映画祭と、それぞれコンペティション部門に選出され、海外でも高い評価を受けている。
『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』
20年前、日本で初めて教師による児童への虐めが認定された体罰事件。福田ますみのルポルタージュ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』を映画化。
三池崇史が監督を務め、綾野剛、柴咲コウ、亀梨和也、木村文乃、光石研、北村一輝、小林薫ら豪華キャストで描く、日常の延長線にある極限状況。男は「殺人教師」か、それとも……。
配給:東映
公式サイト: https://www.detchiagemovie.jp/
(c)2007 福田ますみ/新潮社(c)「でっちあげ」製作委員会
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