「“歌ってもいいし、歌わなくてもいいよ”というスタンスなんですよ」
ーーとてもゆとりがありますね。
「そう。で、“歌ってもいいし、歌わなくてもいいよ”というスタンスなんですよ。マイクも準備してあるし、エンジニアさんもずっと待機しているのに。私が歌っている間は、小林さん、廊下のソファーで誰かと電話をしたり喋ったりしてて、小林さんに“歌い終わりました”と言うと戻ってくる、みたいな。衝撃でしたね」
ーー仕事感がまったくなく、豊かな時間の使い方のように思います。
「そうなんです。普通は、“何時にスタジオに入って、この時間に終わらせましょう”というやり方ですし、予定した時間に終わらなかったらスタッフさんがピリピリしだしますよね。もちろんしない方もいますが、こっちも"12時回ったらスタジオ代が倍かかるな”とか思うんです」
ーーだんだんとプレッシャーを感じますね……。
「ちょっとずつそういう雰囲気が出始めると、バンドメンバーも“メシは……あとでに……する……?”みたいな(笑)。限られた時間でやりきる方が集中できる人もいると思いますし、どっちがいいのかわからないけど、私は昭和の感じがグッときましたね」
フリーな雰囲気は、声にも影響を及ぼしたという。
「小林さんがピアノを弾いてくれて、自分が歌うというセッションで。まったく張り詰めていない状態でセッションするので、お風呂で歌っているような声が録れました。普通、もっと硬くなりそうなものじゃないですか、小林武史さんって大御所だし、そんな大御所がピアノを弾いてくれて生で歌うなんて、緊張する出来事なんですけど、まったく緊張せずに歌えたのは優しい雰囲気を作ってくれたおかげだと思います」
