2013年に『キングオブコント』王者となり、2015年に旗揚げした劇団では岸田國士戯曲賞に2度ノミネート、さらに近年は若手芸人の賞レース『ABCお笑いグランプリ』や『UNDER5 AWARD』にて審査員を務める――芸人からもお笑い好きからもその異才にたしかな信頼を寄せられる、かもめんたる・岩崎う大。その半生は、いくたびもの挫折と巡り合いによって前に進んできた。初の自伝的エッセイ『難しすぎる世界が僕を鬼才と呼ぶ』(扶桑社)を上梓した岩崎に、人生のTHE CHANGEを聞いた。【第1回/全5回】

雲が重く立ち込め、ときおり小雨も降ってくるような空模様が不思議と似合う。丸刈りにヒゲ面の風貌で言葉を選びながら慎重に話す岩崎からは、まさに自伝のタイトル通り「鬼才」の雰囲気が漂っている。
1978年生まれ、東京近郊で子ども時代を過ごした岩崎が、芸人になると決心したのは17歳のとき。オーストラリアで高校生活を送る中でのことだった。
「中学3年生の途中で、親の意向でオーストラリアのパースという街に引っ越したんです。聞かされたときは“英語がしゃべれるようになって、外国人の友達がいっぱいできたらいいな”ぐらいの気持ちでしたね。ただ、『少年ジャンプ』(集英社)が毎週読めなくなることと、ダウンタウンさんの番組が観られなくなることはつらかったな……」
幼少期は『8時だョ!全員集合』(TBS系)や『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ系)、『とんねるずのみなさんのおかげです。』(フジテレビ系)を観て育ち、中学校1年生で『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)に大きな衝撃を受けた。現在46歳、バラエティ番組の黄金期と共に育った世代だ。『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)はリアルタイムで観ながらビデオにも録画し、放送が終わるやいなやすぐ再生して再び観ていたほどの入れ込みようだったという。
現在とは違って、海外から日本のコンテンツにアクセスするハードルが高かった時代。現地の高校に入学して英語での授業に四苦八苦しながら、日本のお笑いへの渇望を募らせた。そんな彼の心をなぐさめてくれたのが、よく行く日本食店が貸し出していた『ごっつええ感じ』のVHSだった。