自分にとって大きかったなと思う3作品

 俳優として様々な映画・ドラマに出演されてきた石田さん。監督業をすることで、過去の監督たちは「あ、こういう思いをしてたんだな」と改めて思ったことはありますか?とうかがうと、「でも監督はそれぞれ。大御所もいれば、そうじゃない人もいて…本当にチームで物を作るってことの大変さは感じました」と冷静な言葉。ちなみに、過去のご自身の作品はご覧になることは?とうかがと。

「あんまりいないですね。終わったものは見返したりはしない」

 と、サラッとしたお答え。『ウルトラマン80』『釣りバカ日誌シリーズ』や、取材時ちょうどNHK BSプレミアムで再放送をやっていたドラマ『國語元年』など、あえてタイトルを出してみたが、「うん、観ないかな」とあっさり。では忘れられない、ご自身にとって忘れられない作品といいますと?とストレートにうかがうと、一瞬考えて3作品を挙げてくださった。

「自分にとって大きかったなというのは『遠雷』(1981年)という作品と青山真治監督の『サッド ヴァケイション』(2007年)。あと韓国でやった『愛の黙示録』(1997年)ですかね。
 どの作品も一生懸命やるんですけど、『サッド ヴァケイション』は演じた役柄が喜怒哀楽とかそういうものじゃなくて、平気で嘘をつく人間だったので、もう深めに勉強をして撮影に臨んだので、とても印象に残ってますね」

 『遠雷』では、日本アカデミー賞の主演女優賞を受賞する。

「あれで世界のドアが開いたような、一気に広がった作品でした。それまで本当に狭いところにいて、うわーっと窓が開いたような。そういう感じを味わせてもらった作品ですね」

 デビューから数多くの作品を重ね、その時代その時代にインパクトを刻んできた石田さん。これまでを振り返って「CHANGE」の瞬間はいつになるのだろうか。

(つづく)

石田えり(いしだ・えり)
熊本県出身。『遠雷』(80年/根岸吉太郎)で日本アカデミー賞優秀主演賞と優秀新人賞を受賞。「第41回カンヌ映画祭」コンペティション部門出品の『嵐が丘』(88年/吉田喜重)、「第64回ヴェネチア映画祭」オープニング作品『サッド ヴァケイション』(07年/青山真治)などに出演。ヘルムート・ニュートンが撮影した写真集「罪ーimmoraleー」(93年)も大きな話題を呼んだ。19年に短編映画『CONTROL』を初監督。『G.I.ジョー・漆黒のスネークアイズ』(21年/ロベルト・シュヴェンケ監督)でハリウッドデビュー。

●作品情報
『私の見た世界』
監督・脚本・編集:石田えり
主演:石田えり、佐野史郎、大島蓉子ほか
公式サイト:https://watashinomitasekai.com/
製作/配給:トライアングルCプロジェクト
(c)2025 Triangle C Project