1970年代から俳優として活躍。映画『遠雷』で日本アカデミー賞主演女優賞。その後『釣りバカ日誌シリーズ』や、様々なドラマに出演。1993年に発行された写真集『罪』は大きな話題となった。それぞれの時代にインパクトを残してきた石田えりさんが今回挑むのは「松山ホステス殺人事件」で指名手配された福田和子を描いた映画『私の見た世界』。福田を演じるとともに、長編映画としては初の監督にも挑んだ。作品に向き合う日々の思いを飾ることのない言葉でまっすぐに語ってくださった。【第2回/全3回】

長編映画の第1作に福田和子を題材として選んだ石田えりさん。彼女を通して人間の本質やその社会が浮き彫りになるような作品。とはいえ、現実の事件に関わる本作。どう捉えていたのだろう。
「彼女をどう捉えたかというと…自分だってどこかで人を殺してる可能性もあるし、殺されてる可能性もあるから、そう捉えれば遠くはないですね。私は全然そんなことする人間じゃないからわからない、こんなことして逃げ回ってひどいじゃないか、みたいな感じはないですよね。身近ですよね、そういう意味ではね。変な言い方だけど、明日は我が身って感じですもんね。
本当に人物としてどう捉えるかっていうのは、きっと観た方がいろいろな捉え方をすると思うし、その人の頭の中でどんなふうにでも作り上げてほしいなと思うんですけど、観た人の中で、“わかんない”って人もいるんですよね。うん…(笑)」
と言葉を少し止め、柔らかな笑顔を見せる石田さん。「わかろうとするというよりは、観る、受けとめる作品という感じもしたのですが」と返すと、「その観方がいいです!」とテンションを高めてくださった。
「再現ドラマとして観て、頭の中でいろいろ考えていくと、訳わかんないかもしれません。なんていうの、ほら、あそこさっぱりわかんないじゃないでしょ。ただ食器を洗っているだけなのに、曲はモーツァルトのレクイエム。考えるとわかんないですよね。でも、そのまま受け止めてくれたら、懺悔の思いなのか、ひとりぼっちで生きる寂しさなのか、そういう孤独感は伝わるかなって思います」
