徐々に“他の役もやってみたい”という気持ちが芽生えた
「関根恵子」として『高校生ブルース』でデビューしたのが1970年ですか。大映では1年半で7本の映画に出演しましたから、本当に忙しかったですね。お正月もお休みはありませんでした。
ところが、3年たたないうちに大映がなくなってしまったんです。幸い、東宝に移籍することができて。移籍後は大人の役も与えられましたし、共演者の方の幅も広がって、とても刺激がありましたね。
『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)でも、当時は17歳でしたが、「シンコ」という大人の、警察官の役でした。共演した萩原健一さん、松田優作さんとは、その後もご一緒する機会に恵まれて。その人でなければ出せない強烈なオリジナリティがあるということを間近で感じました。優作さんはご自身の劇団も立ち上げられて、演出家としての目も持っていらっしゃったので、スタッフの方々と喧嘩するかのような激論を、たびたび交わしていましたね。
現場では、皆さんにかわいがっていただきましたし、とても充実していたんです。ただ、同じ役をずっと演じ続けるのは初めてのことで、徐々に“他の役もやってみたい”という気持ちが芽生えてしまって。プロデューサーさんに、“やめさせてください”なんて伝えたこともありました。「次の展開があるから」と引き留められて。当初は1年間の予定でしたが、2年目に、シンコとジーパン刑事(松田優作)との恋愛、そしてジーパンの殉職によってシンコの恋も悲しい結末を迎えてしまうという展開を経て、番組を離れました。
人生で一番長い日がやってきたのは、その後のことです。
(つづく)
高橋惠子(たかはしけいこ)
1955年1月22日生まれ、北海道出身。1970年、映画『高校生ブルース』で主演デビュー。主な出演作は、映画『旅の重さ』(72年)、『ふみ子の海』(79年)、『泥の河』(81年)、『ラッシュライフ』(98年)、『四月の永い夢』(2017年)、『赤目四十八瀧心中未遂』(03年)、『DOOR』(20年)など。ドラマでは、『泣くな青春』(72年/フジテレビ系)、『太陽にほえろ!』(73~78年/日本テレビ系)、『過ぎし日のセレナーデ』(89年/フジテレビ系)、『葵 徳川三代』(00年/NHK)、『ヒガンバナ~警視庁捜査七課~』(16年/日本テレビ系)などがある。最新映画『「桐島です」』では“謎の女”を演じる。
映画『「桐島です」』
1970年代に起きた連続企業爆破事件の指名手配犯で、49年間の逃亡生活の末、病死した桐島聡の人生を映画化。深い葛藤に苛まれながら偽名を使い逃亡していた桐島は、工務店で住み込みの職を得て静かな生活を送るが……「最期は本名で迎えたい」と名乗り出て、大きく報道された3日後にこの世を去った桐島聡の、数奇な道のりを描く。
出演:毎熊克哉 奥野瑛太 北香那 高橋惠子
監督:高橋伴明
脚本:梶原阿貴、高橋伴明
音楽:内田勘太郎
撮影監督:根岸憲一
配給:渋谷プロダクション
2025年/日本/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/日本語/105分
(c)北の丸プロダクション
新宿武蔵野館ほかにて公開中