不安しかなかった現場復帰
約1年のブランクを経て現場に復帰したが、その時の心境は複雑だった。
「不安……しかなかったですね。ただ、それが俳優をやれないんじゃないかという不安ではなくて、今後自分は生きていけるのかな、生活していけるのかな、仕事にちゃんと就けるのかな……という自分の人生に対しての不安の方が大きかったかもしれないです。僕にとっては俳優が出来ないということはすごく些末な問題であって、それより何より、人として、男としてちゃんとやっていけるのか……という不安の方が大きかったです。
でもこの時に、自分を必要としてくれる人がいたということもありましたが、これからもまだ生き残れるということを改めて感じたりもしたんです。周りを見れば、“アリよさらば”で一緒に生徒役をやっていた仲間も、いつの間にか辞めていなくなっている人が少なくなかったですし、その中でも20年という時間でちゃんとやってこれて、それでもまだ求めてくれている人には感謝しかなかったです」
その後、俳優の田畑智子と結婚し、現在は二人の男の子の父でもある。
「結婚して子供が出来て、子供というものにちゃんと自分が対峙することになって、ほんとにそこで自分の意識が全部変わったのかもと思います。やっぱり、育てていくことの難しさだったりとか大切さだったりとかというものを感じて、自分の中でも尊いモノが出来て、そこをちゃんと守りたいというので、これから死ぬまで動けるなって感じです」

俳優として先輩である風間杜夫からの“ある言葉”が、岡田の人生観に大きな影響を与えた。
「“日常生活をちゃんと出来ていない役者は面白くない”ってことを仰っていて、確かにそうだなって思ったんですよ。俳優である前にやっぱり普通に生活している人間であるから、例えば普通の生活を送る人を演じるのに電車に乗ったことがないとかだと出来ないと思うんです。そういう意味で日常生活というものをちゃんとした方が良いなということを改めて感じさせられた言葉です。その言葉がきっかけで僕も日常生活をすごく大事にするようになりました。
確かに、自分は俳優、岡田義徳でもありますけど、同時に普通の一人間だと思うんです。だから、子供の保育園への送り迎えもするし、イベントがあれば参加もするし子供たちとはしゃいだりもするし。そういう意味では、僕自身も二人には成長させてもらっていると思いますし感謝しています、ほんとに。子供との出会いがなかったら、僕の人生40代で終わるんじゃないかなって思ったりもしますね」
──そんなお子さんたちの未来について考えることは?
「メチャクチャありますよ。彼らがやりたいことをちゃんとやれる環境だけは作っておいてあげたいなとか。親の都合や仕事の忙しさで子供たちの選択肢を減らすということは極力減らしてあげたいなってことはすごく大事にしています」
現在48歳。いわゆるアラフィフ世代に突入した。
「40代は50代を生き抜くための力を付けたいなって。いろんな映像や舞台を惜しみなくやって、上っ面の力じゃなくてちゃんと地盤が固められるような力を付けたいなって思っています」
俳優として、そして父親として、岡田義徳はこれからも新たな挑戦と成長を続けていく。
岡田義徳(おかだ・よしのり)
1977年3月19日、岐阜県生まれ。AB型。1993年、バラエティ番組『浅草橋ヤング洋品店』で芸能界デビュー。翌94年、ドラマ『アリよさらば』で俳優デビューを果たす。以降、『木更津キャッツアイ』(2002年)、NHK大河『篤姫』(2008年)、『八重の桜』(2013年)、『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021年)、『むこう岸』(2024年)、などのドラマ、『映画THE3名様Ω〜これってフツーに事件じゃね?!〜』(2024年)、『君の忘れ方』(2025年)などの映画、『歌うシャイロック』(2023年)、『来てけつかるべき新世界』(2024年)などの舞台に出演。今年10月に開演される音楽劇『MONDAYS/このタイムループ、まだまだ終わらない⁉』への出演が予定されている。
〈作品情報〉
木ドラ24『量産型ルカ‐プラモ部員の青き逆襲』
出演:賀喜遥香(乃木坂46)、筒井あやめ(乃木坂46)、山崎竜太郎、小林桃子、尾木侑樹奈(LINKL PLANET)/岡田義徳
毎週木曜日、深夜24時30分~よりテレビ東京系にて放映中。
公式サイト: https://www.tv-tokyo.co.jp/ryousangataruka/
(c)「量産型ルカ」製作委員会