熊本出身の俳優・宮崎美子さんが、熊本県人吉市を流れる球磨川を舞台にした映画『囁きの河』に出演している。災害に見舞われた地元の人々の強さや、川との共生が描かれる本作への思いとは。また、ドラマ、映画、バラエティと幅広く活躍を続ける宮崎さんがキャリアの転機と感じている瞬間、そしてその後に感じたと戸惑いとは…。【第1回/全3回】

令和2年7月豪雨の被災地である熊本県球磨川を舞台に、失くした居場所を自分で取り戻すまでを描く映画『囁きの河』。熊本県出身の宮崎さんが本作へのご出演を決められた思いからうかがった。
「私は熊本出身ですので、地元の大きな災害から新たな人生を進んでいく人たちの話ということで、これは参加しなくてはという思いに駆られました。実は私は、あの水害の前の日に人吉でテレビのロケをしていたんです。くま川鉄道の蒸気機関車が引っ張る車両で赤い鉄橋を渡って、人吉駅ではお揃いのピンクの法被を着た女将さんの団体の皆さんが歓迎してくださって、本当に温かいおもてなしをしていただいたんです。楽しい街だな、という印象でした。人吉は熊本市内からですと、ちょっと遠いんですが、行くとすごく居心地が良い街なんですよ。
その日は色々なところをめぐって、最後に氷屋さんを訪ねたんです。球磨川の支流の川沿いにある工場なんですけど、夕方になって急にみんなのスマホが鳴りだして、どうしたんだろう、と思ったら、警報が出たという話で……。地元の方も上流のほうだし大丈夫じゃないかな、という感じだったんです。私たちはそのまま車で帰って、夜になったら、雨は激しくなって、翌日のニュースで見たときは本当に信じられない状況でした」