8月4日から上演されるミュージカル『ある男』に出演中の知念里奈さん。稽古中の控室にお邪魔して、公演直前の心境から、歌手として活躍した90年代のお話、プライベートのお話などなど、根掘り葉掘り聞かせてもらいました!【第2回/全2回】

――00年代に入ると女優業にシフトして、初ミュ―ジカルは03年の『ジキル&ハイド』。『ある男』でも共演する鹿賀丈史さんの代表作で、鹿賀さん演じるジキルの婚約者役でした。
「このときは“裏声”にとても苦労しました。ソプラノの裏声が必要な役で“裏声って何? 鹿賀さんの婚約者は、どんな声を出すんだろう?”というところからのスタートで……」
――確かにミュージカルは、それまでの活動での歌い方と全然違いますからね。
「だから誰よりも早くレッスン場に来て歌の稽古をして、途中で一回トイレで泣いて戻ってきて、居残りしていました。オーディションではなくオファーだったからこそ、より必死で練習しました」
――その涙の意味は?
「共演の方々はベテランばかりで、私よりも上手な人がたくさんいる中でこの役をもらっているのに、私はできていない……という悔し涙ですね」
――大変なご苦労をされたんですね。
「東京公演1か月の間で“やったほうがいい”と言われることは全部しましたね。走ったりマッサージに行ったり。それで日ごとに少しずつ手応えを感じるようになると、最初は厳しい声もいただいたりもしたんですが、お客様の反応も変わってきて。終わる頃には“次もやりたい!”という思いになっていきました」
――その後『ミス・サイゴン』『レ・ミゼラブル』など大作での主要キャスト抜擢が続き、“ミュージカル女優”へのキャリアをコツコツと積んでいた中、05年に結婚と妊娠を発表。出演中だった3作品を降板したことが報じられましたが、この時の心境はどのようなものでしたか?
「そうですね。言葉のチョイスが難しいですが、自分がつらいというより、責任の取れないことをしてしまったという気持ちで……。ただ、私の人生の中でのとても大きな転機でした」