「新しい自分が涙を流して喜んでいる、みたいな」

ーー何事もなくよかったです。少しの変化も不安になりますよね。

「そうなんですよ。それで、その後、“様子を見たいから横になっていてください”と個室ベッドに案内されて、母と2人、お腹の心拍音を1時間近く聞いていたんです。その音がすごく神秘的だなと思いました。赤ちゃんの心臓の音ってこんなに明確に聞こえるんだ、ということを感じて、涙が止まりませんでした」

ーー不安だった分だけ、命を実感して感情が動いたんですね。

「そうですね。お産もすっごく楽しくて。取り上げていただいたとき、先生たちが一瞬静かになったと思ったら、直後に赤ちゃんの産声が聞こえてきて。息子が大きな声で泣いてくれた瞬間、なんか、あの、噴水みたいだったんですよ。涙の出方が。ブワーーッ! って。自然に流れるせせらぎのような涙のほうが美しいのかもしないですけど、噴水だったんです。新しい自分が涙を流して喜んでいる、みたいな、そういう感覚でした」

 産婦人科医たちから祝福され、「赤ちゃんの初めてのチューと言って、抱き寄せて私のほっぺにチュッとさせてくれた」と、昨日のことのように教えてくれる。

「そのすべてがあたたかかったんです。で、そこからもう手放したくないんです。“お母さん、出産直後はゆっくり休んで寝なきゃダメなんですよ”と言われても、“私全然眠くないです! 赤ちゃんと一緒にいたいんです。お願いします!”って、絶対に手放さないぞという姿勢で。でも先生から”現実的に考えてムリですよ”と説得されて。最後は誰も見ていないと思って寝ている赤ちゃんを抱っこして、ずーっと寝顔を見ていました。まさに『LOVE BRACE』でしたね。離れるのが本当に寂しかったです」