真面目な部分がネットで取り上げられる

「でも、俺はその手前でしていた“街頭演説でアメリカに意見表明してた石破さんは場所間違えてる”“新潟県上越市の市長は地元の米を愛しすぎて利き稲ができる”のような政治家を茶化したネタをしゃべりたかっただけだったんですよ。
 ネットで取り上げられるのは真面目な部分でも、別に俺は真面目なことをしゃべりたいわけじゃない。ただ、真面目なこととくだらないことをセットにしてしゃべれば、真面目な部分が取り上げられて、その動画をたどってみた人が“何だこいつ?”と存在を知ってもらえることもあると思うんで。そこで“真面目なこと言うてへんやんけ”で離れていく人に関しては、追っかけてくれなくて構わないですし。
 言いたいことを言いにくいと感じている芸能人や芸人は、たぶん真面目な話題について真面目にしゃべりたいんでしょう。それで、反対意見の人たちからやいやい言われるのがストレスになる。でも俺の芯にあるのは“くだらないことを言いたい”だけなんで、全方向からやいやい言われてもそない気にならへんですね」

 面白いことさえ発信していれば、必ず評価される。そのような大衆への信頼が濱田の言葉からは伝わってきた。

「テレビを見ている視聴者はすごくナチュラルで、面白かったら笑ってくれるものだと信じてます。それは自分が子供の時にバラエティー番組を見て、出ている人が芸人だろうが芸人じゃなかろうが面白かったら笑っていたんで、そこはみんな自分と同じなんじゃないかという気がしていますね」

 濱田は言う。「障害のあるなしに関係なく、面白かったら笑えばいい」。しかし、それは「障害者=いじられる側」を意味するわけではない。濱田は点字ブロックのない街をいじる。しくじった政治家をいじる。この記事についてSNSで言及するあなたをいじってくるかもしれない。その見えない眼差しは、常に笑いの対象を探している。

濱田祐太郎(はまだ・ゆうたろう)
​1989年、兵庫県生まれ。NSC大阪校35期生として、2013年にデビュー。2018年3月に『R-1ぐらんぷり』で優勝。今年5月には吉本新喜劇とコラボした舞台『盲目のお蕎麦剣士が巻き起こす新喜劇』に主演。趣味はギター。好きなものはサンリオ。

■インフォメーション
『迷ったら笑っといてください』
著:濱田祐太郎/発行:太田出版
『濱田祐太郎のブラリモウドク ―盲目芸人のブラリ旅in熱海 1時間スペシャル!濱田の目に夏の熱海はどう映る?―』
https://tver.jp/episodes/eptbmr0fs5

盲目のピン芸人 濱田祐太郎の街ブラバラエティが1時間特番になって帰ってきた!今回はブラリ熱海旅スペシャル!観光客賑わう食べ歩き商店街、海鮮グルメを堪能!さらに人生初のシュノーケリング体験や、20年ぶりの自転車運転も!果たして濱田の目には、熱海はどう映るのか?そして、濱田の唯一無二の武器、「毒舌」=「モウドク」を思う存分発揮しながら熱海の魅力を発見できるのか?