俳優・中島歩の姿は、NHKの朝ドラ『花子とアン』や大河ドラマ青天を衝け』、映画や配信ドラマ、ミュージックビデオなど多くの作品で目にしている。
 そのデビューは、2013年にパルコ劇場40周年記念公演『黒蜥蜴』で200名にもおよぶオーディションの中から選ばれたことだった。
 唯一無二の存在感を放つ人気俳優の重要な変化、「THE CHANGE」とはなんだったのだろうか?【第1回/全3回】

中島歩 撮影/片岡壮太

 撮影中の中島さんの姿に、取材陣から言葉にならない感嘆の声が思わず漏れた。スラっとした長身から伸びた長い手足が、ワンショットごとに美しいフォームを描く。「絵になる」というのは、こういうことだろう。

 近寄りがたいほどのオーラを感じる中島さんだが、インタビューをすることになり机に座って向かいあうと、ゆっくりと言葉を選びながら、穏やかに、ときどき少年のような笑顔を見せ、話しているだけで温かい空気に包まれてしまうような人物だった。

 俳優という仕事を始めた当初と現在とで変わったことを聞いてみると「今のほうが楽しんでる感じがしますね」という言葉が返ってきた。

「大学を卒業して、美輪明宏さん主演の舞台『黒蜥蜴』からお芝居を始めたんですが、そのころは“右も左も分からない”って感じでした。

 野球でいうと、今はちゃんとルールが理解できて、バットのスイングとかもある程度できるようになって、ちゃんと試合ができるようになった感じですね。以前は手取り足取り演出家に言われてやるみたいな意識でしたけど、 主体性を持って現場でアイディアを出したりできるようになってきたので」

中島歩 撮影/片岡壮太