「いまの人たちから忘れられたもの」を見出してもらいたい
「今度のお芝居は昭和50年代の那須高原が舞台で、見川鯛山先生の原作と同じ時代ですね。2025年の現代社会っていうものは、とにかくどんどんどんどん、何か忙しくなっているんですよ。それに対してゆったりした時間を描いている舞台をやれること自体が、面白いのかな。都会じゃないしね」
ますます忙しくなる世の中だが「人間、お金じゃないんだよ。でもお金がないと。生きていかなきゃいけないんだよね」と現実も受け止めたうえで、見る人がのんびりと心の羽を伸ばせる舞台にしようとしている。
「だって、ちょっとそこまで行くにも電車賃がかかるんだもん。出かけなきゃいけないってときに、歩いて行って熱中症で倒れたら元も子もないわけ。涼しい電車に乗らないといけない。でも『また本日も休診』の本を読んでると、そういうお金に忙しくなってない人たち……いや、本当は彼らだって忙しいというか、貧しいんだけど(笑)。本の中の人たちも、ゆったりしているように見えて、本当はけっこう忙しいと思うんですよ。だけどそういう、いまの人たちから見れば忘れられた、忘れちゃってた時間のゆるさ。これを舞台を通して見いだしてもらえたらいいですね。鯛山先生のエッセイも、田村孝裕さんの台本もそこをうまく書いてくれているんです」
