大劇場で公演「“自分はアマチュアだ”なんて言っている場合じゃない」
いまでも東京乾電池は下北沢にアトリエを構えている。収益第一でもなく、完全なアマチュアでもない。絶妙なバランスで芝居に打ち込んできたことを、言葉を選びながら語った。
「今回『また本日も休診』を明治座さんという華々しい大劇場でやるけれど、私なんか立てないよ(笑)。でもこういう場に立たせていただく以上は、“自分はアマチュアだ”なんて言っている場合じゃないしね。でも僕はたまたま劇団から芝居の道に入っちゃったから、ベースにはアマチュア性があるんだと思います。でも見ていて思うのは、どんな俳優にも、僕はアマチュア性を感じますね。勝手に感じてるんだけどね」
どんな名俳優にも、損得を越えてその人にしか出せない、努力の果実を見せる瞬間があると考えている。
「例えば藤山直美さん。大天才、なんて言葉を使ったら直美さんに失礼かもしれないけど、大変なプロなわけだ。あるいは亡くなられたけど(中村)勘三郎さんにも、僕はアマチュアらしいところを感じてしまいます。ご本人はどう思っていらっしゃるかわからないけど」
鋭い観察眼は、劇団の後輩たちにも注がれている。例えば今作で共演する、江口のりこだ。以前『THE CHANGE』に彼女が登場してくれた際、多忙だった時期にかけられた「あんたね、寝なきゃだめだよ」という柄本の一言を紹介している。その一言をきっかけに睡眠をしっかり取るようになり、自信の源になったという。このエピソードを覚えているか聞いてみると……。
「ああ、そんな良いこと言ったんだね(笑)。そうだよな。寝なきゃだめだもんな。普通のことだもん。寝てなさそうだから言ったんでしょう(笑)。やっぱり俺に限らず、皆ほかの役者のことはどこかで見ていますよ。長いことやっていると、“ここはいいな”とか“ダメかな”と思うところは出てきます。芝居を見るのも大事ですよ」