山田さんが演じた交渉人・類家の人物への理解

――スズキタゴサクと対峙する交渉人・類家をどんな人物と捉えて撮影に臨まれたのでしょうか。

「言い方が難しいのですが、世の中って、いつでもどこでも悲しいことが起きているじゃないですか。その事実に目を向ければ、いくらでも共感したり悲しい思いになれたり、相手に寄り添ったりすることができるけど、みんながそういう人たちばかりではないですよね。

 自分たちだけのことを考えたら、大切な人や身の回りの人がいなくなってほしくないと思うけど、世界を見回せば今もどこかで人は亡くなっていて、その全てを自分が止められるわけではないので、類家はそういうところがすごくフェアな人だと思うんです。

 犯罪などの悪意によって失われてしまう命全部を救うことは無理だし、我々はそういう世の中を生きていて、そういう動物なんだということをきっと類家は思っている。だからタゴサクにも平気で“いつでもどこでも人は死ぬ。違う?”と言えると思うんです」

――「どうせ次の爆弾が爆発したって自分のせいじゃない」、「誰が死のうがどうだっていい」と思ってしまう空気を、あの取調室内で感じました。

「類家はタゴサクを止める側の人間だけど、世の中を壊す側に回るより、それを食い止める側の方が、ゲームとして面白いと思っているだけなんだと思います。“世の中を壊すなんて誰でも出来る。壊すのを食い止める方が難しいし、ずっとやりがいがある。 ”というセリフもありますが、人間をそういう動物として考えていて、すごく悲観してしまっているなという感覚はありました」

山田裕貴 撮影/冨田望