旅立った父にもしも聞けるなら「達郎さんのそばで、どんな気持ちでドラムを叩いていたのかな」
「実は昔、父親が、ラーメン屋さんを“例え”にして、話してくれたことがあったんです。“ラーメンには醤油や味噌、豚骨、塩など、いろいろな味があって、それぞれに好きな人がいる。100人いたら、100人の好みは違っているから、あっさりした醤油ラーメンが好きな人に、むりやりこってりした豚骨を押しつけることはできないんだ。だからこそ、自分がこれがうまいと信じたものをやればいいんだ”と言ってくれたんです。その言葉が、いまもずっと心に刺さってるんですよ」
山下達郎さんが絶大な信頼を寄せたことでも知られる名ドラマー、青山純さんを父に持つ英樹さん。同じ道を歩む先輩として、父親の存在はいまなお大きなもののようだ。
「音楽の話をよくしてくれました。若いころはどこか父とは違うスタイルを確立したいという反発心があったんです。だから、存命中の父とは、あんまり深いところまで音楽の話をしてきませんでした。もう旅立ってしまったから聞くことはできませんが、たとえば達郎さんのそばで、どんな気持ちでドラムを叩いていたのかなとか、サポートドラマーとして、どんな気持ちで寄り添っていたのかなとか、尋ねたいことはいろいろありますね」