“長女らしい長女”というシンパシーを感じた

 演じる翠は恋人も職も失う、まさに絶望のどん底にいるヒロインだ。

「翠には年の離れた妹がいるんですが、両親を事故で失ってから、母親代わりのような感じで、妹が成長するまで面倒を見ながら働いてきた女性です。私にも妹がいるので、台本を読んだ時に翠に対して“長女らしい長女”というシンパシーを感じていました」

──“長女らしい長女”というのは?

「我慢することや空気を読むこと、強がりが得意だったり、その一方では甘えることが苦手だったり。だからこそ、本音をグッと押し込んで我慢してしまう部分などは、すごく理解できるなって」

──そうすると、感情移入しやすかったのではないですか?

「そうですね。私だったら、もうちょっと口に出して言っちゃうんですけど(笑)。守らなきゃとか助けなきゃ、みたいな庇護欲が強いところは自分にもあると思っていたので、“わかるわかる!”という感じでした」

 そんな翠はどこか漠然と “結婚して子供を産むのが当たり前”と思って生きてきた女性だ。現代において旧態依然、あるいは昭和的と評されることもあるかもしれない。この点を、宇垣さん自身はどのように捉えているのだろうか。

「それが女の幸せかどうかは別として、“みんな結婚するし、子供も産むし…” 何となくそういう価値観を植え付けられてきたんじゃないかと思うんです。それは、私の世代の女性だとすると無きにしもあらずな部分だと思っていて。その点だけを取ってみたら、旧態依然としているのかもしれないですね。いま時代が変わってきている、でも育ってきた過程はそうではなかった……そういう意味で未だあの頃の古い価値観を内面化してしまっているのかなと思います」

 そして、翠の良き理解者が親友のエリカだ。演じる水崎綾女とは年齢も近くてほぼ同世代、出身も同じ神戸ということもあり、安心感があったと語る。