2人が語る原作映画と黒澤明へのリスペクト

渡辺「まだ映画の黎明期というか、技法も発展途上の中でなぜあれほどの魅力が出るかっていうと、やっぱりエネルギーのぶつけ合いがすごいからですよね。小手先ではなく、あの時代の中にあるものを黒澤さんは捉えたんじゃないかな、と思います。戦後数年で撮ったとは思えなかったです」

北山「なんなら、あの時代のにおいがしてきそうですよね。男同士の熱意のぶつかりあいで、ちゃんとその人の心の中の誇りとか、気持ちまでカメラで捉えていました」

渡辺「そうそう。まだ物資もなにもかもが不自由なのに、あれだけ心に残る作品になったのは、不自由な時代だからこそ皆さんがあがいてエネルギーを出されていたのかなと思っていて。こう言ってはなんだけど、良い環境が良いモノを作るとは限らないんだな、と思わされました」

北山宏光 撮影/有坂政晴

――今回の舞台美術について、何か印象的なことはありましたか?

北山「これ言っていいのかな?(笑)。セットの上に布があって、真ん中に穴が開いているんですよ。これにものすごく意味を感じていて。
 心の穴にも見えるし、日本の国旗にも見える。それを皆で見上げる構図になっていることにも、ものすごく意味があります。やっぱり映画から受け継いだものを、今回、お芝居として表現できることも縁だよね」