一見すると相反する“嘘のない芝居”の真意
――ただ、“嘘をつかない”と言っても、自分ではない誰かを演じることが俳優の仕事です。虚構の人生を演じることとの折り合いはどのように付けるのでしょうか。
渡辺:演技でも、嘘をついているのってお客さんに分かってしまうんです。だから思ってもいないことを芝居にするのは良くないんですが、かといってただ役になりきるのではいい芝居にならないんです。どこかに渡辺大らしい要素を見出してもらえる芝居の方が、より共感してもらえるなと思います。
――ただ役柄をなぞるのではなく、そこに渡辺さんらしさを交えると。
渡辺:そうですね。演劇の面白さって、その人が生きてきたものが透けて見えるところにあると思うんです。お客さんは、その人だけの物語を楽しみに来てくださるんじゃないでしょうか。
例えば実際に人を殺したことはなくても、本気で誰かを憎んだ経験があれば、その分、凄みが増します。自分が経験してきた喜怒哀楽の感情を、役の人物が感じたであろう感情に重ねていく。「この人の弱さや強さは自分のものでもあるんだ」と思うことで、初めて嘘のない芝居になるんだと思います。
26歳で下した大きな決断と、経験の中で見出した揺るぎない哲学が、2人の表現者としての軸になっていた。
(つづく)
・北山宏光
スタイリスト/柴田 圭
ヘアメイク/大島 智恵美
・渡辺大
スタイリスト/久保コウヘイ(QUILT)
ヘアメイク/大塚貴之(Rouxda)
スーツ/103,400(ボブ/タキヒヨー☎︎03-5829-5671)
その他スタイリスト私物
きたやま・ひろみつ
1985年9月17日生まれ、神奈川県出身。2002年より芸能活動を開始し、舞台・映画・ドラマ・音楽などで活躍を続ける。2023年にはTOBEへ合流し、同年11月にソロデビューシングル『乱心-RANSHIN-』をリリース。楽曲制作やライブの演出を手掛けるほか、『君が獣になる前に』(テレビ東京系)、『DOCTOR PRICE』(日本テレビ系)などのドラマにも出演し、ソロアーティストとしての音楽活動と俳優業を両立させている。
わたなべ・だい
1984年8月1日生まれ、東京都出身。2002年、父・渡辺謙が演じる吉村貫一郎の青年時代役で『壬生義士伝 新選組でいちばん強かった男』(テレビ東京系)でデビュー。以降、ドラマ、映画にて現代劇から時代劇までコンスタントに出演を重ねる。2018年、映画『ウスケボーイズ』でマドリード国際映画祭2018・最優秀外国語映画主演男優賞、アムステルダム国際フィルムメーカー映画祭2018・最優秀主演男優賞を受賞。
【公演情報】
舞台『醉いどれ天使』
原作:黒澤明 植草圭之助
脚本:蓬莱竜太
演出:深作健太
出演:北山宏光
渡辺大 横山由依・岡田結実(Wキャスト) 阪口珠美 / 佐藤仁美 大鶴義丹 ほか
東京公演:11月7日(金)~23日(日) 明治座
名古屋愛知公演:11月28日(金)~30日(日) 御園座
大阪公演:12月5日(金)~14日(日) 新歌舞伎座
公式サイト:https://www.yoidoretenshi-stage.jp