どこにいても華のある人、若村麻由美。2025年11月から2026年にかけて、全国6都市をまわる舞台公演『飛び立つ前に』では、同じ劇作家、演出家による6年前の舞台『Le Pere 父』で父・娘を演じた橋爪功と、長年連れ添った夫婦を演じる。1987年放送のNHK連続テレビ小説『はっさい先生』でのヒロイン役デビューにはじまり、ドラマに映画、舞台と、現代劇、時代劇問わずに魅せる若村さんのTHE CHANGEを聞く。【第1回/全3回】

若村麻由美 撮影/三浦龍司 ヘアメイク/保坂ユミ(eclat) スタイリスト/岡のぞみ

 人生のTHE CHANGEへの問いに、若村さんは「役者になったこと」とまっすぐな答えを返した。朝ドラ『はっさい先生』でデビューを果たした若村さんだが、当時、若村さんは仲代達矢さん主宰の俳優養成所、無名塾の研究生だった。

「私にとっては“無名塾”との出会いが人生の大きな転機でした。高校時代に『ハロルドとモード』というお芝居をたまたま観に行ったんです。私がいま俳優としてこうしてここにいるのは、そのときの運命の出会いのおかげです」

――『ハロルドとモード』の前に、自分から演劇に足を運んだことはあったのですか?

「歌舞伎や宝塚といった大きなステージのものは観たことがありました。ただいわゆる翻訳劇のストレートプレイを観たのはそのときが初めてで、“無名塾”の舞台を観たのも初めてでした。それまでもクリエイティブな仕事をしたいという思いをずっと持っていたなかでの出会いだったことと、主人公の男の子が自分と同じくらいの年で、共感しやすかったこともあって、特に心に響いたのだと思います。17歳の終わりの頃でしたが、17年間、世の中にこういった世界があることを知らずに生きてきたんだと感じたくらい、そこで“出会った”という感覚になりました」