「高校生のころは、“強くなりたい”と思いながら毎朝目覚めるような暗黒の時代でした」

 ものづくりはしたいのだけれど、人前に立つのは苦手で。塾生がたくさんいるなかで稽古をしているときに、“麻由美は姿勢がいい”とほめられて、みんなの視線が自分に向いたりすると、その瞬間に姿勢を悪くしてしまう(苦笑)。目立つのがイヤで、なるべく注目されないようにしていました。でも、自分自身、そこが一番課題だと思っていました」

――自分でも課題だと。

「自分を信じられないことがイヤだったし、自分の弱さがイヤでした。高校生のころは、“強くなりたい”と思いながら毎朝目覚めるような暗黒の時代でした」

若村麻由美 撮影/三浦龍司

――そうなんですか!?

「それが無名塾に入ったことで、いろんなチャレンジをさせていただきました。お稽古はマンツーマンでしたが、みんなが見ています。私は赤面症でしたので、それはもう真っ赤なゆでだこのような状態になって、声を出すのも大変でした。そうした状態から、仲代さんや宮崎さんに、なんとか役者としてできるようになるまでリハビリしていってもらった感じです。“無名塾”に入ったことは、本当に大きなCHANGEだったと思います」

仲代さんと宮崎さんには、若村さんの外見の美しさもさることながら、体の姿勢の良さと同じく、リハビリにへこたれない体のうちの姿勢の良さ(芯の強さ)が秘められていることも、見抜けたのかもしれない。

わかむら・まゆみ
1967年、1月3日生まれ、東京都出身。高校卒業後に仲代達矢主宰の俳優養成所、無名塾に入塾。養成期間中の1987年10月から放送されたNHK連続テレビ小説『はっさい先生』のヒロインにてデビューを飾った。ドラマ、映画、舞台で現代劇から時代劇、古典劇と幅広く活躍している。近年の主な出演作にNHK連続テレビ小説『おちょやん』、ドラマ『科捜研の女』シリーズ(テレビ朝日系)、『この素晴らしき世界』(フジテレビ系)、『初恋、ざらり』(テレビ東京系)、『緊急取調室』第5シーズン(テレビ朝日系)、映画『老後の資金がありません!』など。舞台『チルドレン』(18)にて第44回菊田一夫演劇賞を、『Le Pere 父』(19)で第27回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。最新舞台は、日本初演の『飛び立つ前に』、26年4月『メアリー・スチュアート』でエリザベス1世を演じる。

『飛び立つ前に』
作:フロリアン・ゼレール
翻訳:齋藤敦子
演出:ラディスラス・ショラー
出演:橋爪功、若村麻由美、奥貫薫、前田敦子、岡本圭人、剣幸
東京:2025年11月23日(日祝)~12月21日(日) 東京芸術劇場 シアターイースト
兵庫・島根・宮崎・秋田・富山公演あり