岡本圭人さんの成長に感動した

――デビュー作から見てきた岡本さんが、こうしてどんどん公演を重ねていく姿は、先輩としてどう映っているのでしょうか。

「実は『飛び立つ前に』のお稽古場が、『Le Fils 息子』の初演のときの稽古場で、ここでの稽古はそれ以来なんです。その間、彼は何十本も舞台に出演されてきて、目の前にいる彼と、『Le Fils 息子』で同じ場所に座っていた彼とがオーバーラップした瞬間がありました。そのときに、自分のなかで“なんて成長されたんだ”と感動しました。役者として余裕が出てきたのを感じます」

――役者さんの中では、若村さんが特に変化を近くで感じているかもしれません。

「初舞台のときは、当然、初めてだったことと、精神的にも追い詰められた青年の役をやっていたこともありますし、お父様(岡本健一さん)との共演だったというハードルもありました。とても大変だったと思います。そこから多くの仕事を経験して、役者として十分に成長した彼が同じところにいるのを見て、なんだか感慨深くて、すごいなと思いました」

 同じ空間に、80代で主演として引っ張る橋爪さんがいて、若き岡本さんがいる。そこにさらに輝いてみせる若村さんがいる。物語を紡ぐのが、生身の人間であることをはっきり感じさせてくれるのが舞台だ。

若村麻由美 撮影/三浦龍司

わかむら・まゆみ
1967年、1月3日生まれ、東京都出身。高校卒業後に仲代達矢主宰の俳優養成所、無名塾に入塾。養成期間中の1987年10月から放送されたNHK連続テレビ小説『はっさい先生』のヒロインにてデビューを飾った。ドラマ、映画、舞台で現代劇から時代劇、古典劇と幅広く活躍している。近年の主な出演作にNHK連続テレビ小説『おちょやん』、ドラマ『科捜研の女』シリーズ、『この素晴らしき世界』『初恋、ざらり』『緊急取調室』第5シーズン、映画『老後の資金がありません!』など。舞台『チルドレン』(18)にて第44回菊田一夫演劇賞を、『Le Pere 父』(19)で第27回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。最新舞台は、日本初演の『飛び立つ前に』、26年4月『メアリー・スチュアート』でエリザベス1世を演じる。

『飛び立つ前に』
作:フロリアン・ゼレール
翻訳:齋藤敦子
演出:ラディスラス・ショラー
出演:橋爪功、若村麻由美、奥貫薫、前田敦子、岡本圭人、剣幸
東京:2025年11月23日(日祝)~12月21日(日) 東京芸術劇場 シアターイースト
兵庫・島根・宮崎・秋田・富山公演あり