できる限り正直でいようと心掛けています

『人間標本』のテーマのひとつにも通じる、自分と世界との向き合い方についても聞いた。

――『人間標本』では、「家族の愛」も深く刺さってきます。自分を形成していくのに、家族というのは、どんな影響を持つ存在だと思いますか?

「家族と言っても、ひとりひとり全く違いますよね。それに、同じ家庭で育っても、兄弟で全然違ったりしますし。“家族が人に与える影響”は、簡単には言えません。もちろん影響自体は大きいとは思いますが、家族に守られる人もいれば、家族から抜け出さなければいけない状況の人もいます。ほかのことと違って、本当に語りにくいテーマだと思います。一概には言えないですね」

――では家族に限らず、西島さん自身が、人と人との関係を築いていくうえで大切にしていることは何になりますか。

「できる限り、正直でいようとは心掛けています。ちょっとでも繕ったり、良い感じに言葉を装ったりすると、相手に伝わらないんです。本当のことを話しているときが、一番自分の言葉に力があると感じるので、できるだけ正直でいようと思っています」

――「正直」というのは、難しいことだとも感じます。

「人と人との関係で、見ないようにしていたり、何か問題を保留していると、結局いつかは表に現れてくると思っています。自分のなかでなにかひっかかることがあれば、できるだけ正直に包み隠さず相手に伝えて解決したいなと思いますし、そうした健全な関係でいたいと考えています」

 これまで取材してきた若手俳優の何人かから、「影響を受けた先輩」として西島さんの名前を聞いたことがある。俳優としての演技力はもちろんのこと、謙虚で真摯な西島さんの人柄からも大きな影響を受けるのだろう。

(つづく)

西島秀俊(にしじま・ひでとし)
1971年生まれ。東京都出身。大学在学中より俳優活動を始め、1992年に本格デビュー。映画『ニンゲン合格』(99)、『Dolls(ドールズ)』(02)、『CUT』(11)他多数の作品で主演を務め、『ドライブ・マイ・カー』(21)ではアジア人初の全米映画批評家協会賞主演男優賞に輝いた。映画化されたドラマ「MOZU」シリーズ(14~15)、「きのう何食べた?」シリーズ(19~23)などにも出演。近年の作品に映画『首』(23)、『スオミの話をしよう』(24)、『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』(25)、ドラマ『Sunny』(24)など、国内外の作品に出演し活躍中。

作品情報
『人間標本』
原作:湊かなえ 『人間標本』(角川文庫/KADOKAWA刊)
監督:廣木隆一
美術監修・アートディレクター:清川あさみ
出演:西島秀俊、市川染五郎、宮沢りえ、伊東蒼、荒木飛羽、山中柔太朗、黒崎煌代、松本怜生、秋谷郁甫
2025年12月19日(金)よりPrime Videoで世界独占配信(全5話一挙配信)
製作:Amazon MGMスタジオ
コピーライト: ©2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.
作品ページ: https://www.amazon.co.jp/dp/B0FWX9LPYQ