「“掃除機”と“正直”の区別が付けられないというレベルでした」日本語に帰ってきてすぐの、忘れられない記憶
帰国したとき、彼にとってメインの言語はスペイン語で、日本語は片言しか話せなかったという。
「“掃除機”と“正直”の区別が付けられないというレベルでした。すごくよく覚えているのが、日本に帰ってきてすぐのころ、知らないオジサンから“ぼく、かわいいね”と言われたんですよ。いまだったら“きみはかわいいね”ということだとわかるんですけど、当時のぼくは“え? オジサンが、自分のことをI‘m cute.って言ってる。怖い……”と思っちゃいました(笑)」
しかし日本で生活する間に、日本語が自分の言葉になっていった。
「スペイン語は、母やきょうだいくらいとしか話す機会がないので、どんどんヘタになっていますね。“魚”というスペイン語はわかるけど“アジ”や“マグロ”はわからない。他の言葉もだいたいそんな感じです。英語に関しても、日常会話は問題ありませんが、ネイティヴではないし、知らない単語のほうが圧倒的に多いです」
もちろん謙遜も入っているだろうが、「日本語に比べて英語のスキルは半分以下」だという城田が、『PRETTY WOMAN The Musical』では、日本語版台本と訳詞にチャレンジした。
「これまで翻訳物のミュージカルにもたくさん出演させていただいてきましたが、ずっと、日本語の歌詞についてはもっとできることがあるのではないかと考えていました。というのも、原曲はメロディーに乗ったときに、その言語がもっとも美しく聞こえるように詩が書かれているわけです。それを和訳するときの最大の問題は、“英語に比べて日本語は圧倒的に言葉数が多い”こと」