「解説」なら楽しく聞いてくれるはずだ

 数年して東京に転勤になったのですが、それが大きな転機となりました。東京にずっと出たいと思っていたんです。修学旅行で東京に来たことはありましたが、名古屋とは比べものにならないくらいの都会で、それが印象的だったんです。

 そして、いざ出てきたこの大都会は、名古屋の数倍面白い。東京でいろいろ回って、あちこちの街に感動したのは今でも覚えていますね。

 その東京でテレビにも呼んでもらって、しかも、“面白い” とさらに他の番組にも出してもらえるようになって、CMにまで出演させてもらったんです。当時、20代で出させてもらえることはほとんどありえませんでしたから、ありがたかったですね。

 そんなあるとき、天気予報が外れて、その理由を解説した日がありました。今でもよく覚えていますよ。朝7時前の5分間を、週に2日ほど担当していたNHKラジオですね。「上空の寒気を見極められなかった」というように、予報を外した原因を淡々と言葉にしたんです。

 すると、その放送を国文学者の池田弥三郎さんが聞かれていて、どこかの新聞に「きれいな日本語で、分かりやすい解説をされた」と記してくれたんです。そのコラムを新聞で目にしたときに「これは、私のことだ」と、すごく嬉しいとともに、励みになりましたね。大事なのは、分かりやすく伝えることなんだと。

 その頃から「説明」と「解説」をしっかり区別するようになりました。「説明」するだけでは、聞くほうもつらい。でも、「解説」なら楽しく聞いてくれるはずだと。野球でもサッカーでもそうじゃないですか。解説者が面白いかどうかで、それを見ている視聴者の捉え方などもすべて変わってくる。 

 じゃあ、天気予報はどうしたらいいものか。そのヒントとなったのが将棋番組だったんです。

(つづく)

森田正光(もりたまさみつ)
1950年4月3日、名古屋市生まれ。高卒で日本気象協会勤務。20代で東京転勤になって、ラジオテレビの気象予報を。40代で独立して、ウェザーマップ社長。今では160人の予報士と契約する。現在も週1のテレビ出演(TBS)で、予報士歴は50年になる。趣味に沖縄の「島バナナ」の栽培販売など。