「ふとなんの気なしに」かけてもらえる言葉
うれしい声をかけてくれるのは、先輩だけではない。
「古くからいらっしゃる女方のお弟子さんに、なにかについて“これ、大丈夫かな? 変じゃありません?”と聞くと、手でマルを作ってくれたり。ふとなんの気なしに、“お坊ちゃん、あのお芝居のあそこ、よくなりましたね”と言ってくれたり。そういった細々としたひとつひとつを、こぼさないようにいただいて、栄養にしています(笑)」
ーー米吉さんご自身も、後輩たちにそうした声をかけますか?
「生意気なことですが、仲間内や後輩のお芝居を拝見して、よかったなと思うところは何気なく伝えるとかしています……けど、褒めて天狗にさせて、若い芽を潰してやろうっていう魂胆かもしれませんよ? 肥料を与えすぎると、根腐れを起こしますからね(笑)」
ーーなるほど、わかりました(笑)。
「わかっちゃったのね」
まるで照れ隠しのように、米吉さんは笑うのだった。
■五代目 中村 米吉(ごだいめ なかむら よねきち)
1993年3月8日生。東京都出身。播磨屋。2000年に襲名し初舞台を踏んだ。2011年に女方を志し、2015年に『鳴神』で雲の絶間姫役を演じ十三夜会奨励賞を授賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。近年はバラエティ番組ほか、2023年1月よりドラマ『ママはバーテンダー~今宵も踊ろう~』(TBS系)で連続ドラマ初出演。WEBメディア「ステージナタリー」でコラム「中村米吉の#カワイイは世界を救う?」を連載している。またWEBラジオAuDeeでは『中村米吉の悪魔の時間』で甘いものを歌舞伎のお役に例えてご紹介。9月2日~25日に歌舞伎座にて「秀山祭九月大歌舞伎」に出演。