「やっぱり、作品、人との出会いということでしょうね」

ーーそういう奇跡のようなことがあるわけですね。

「僕がいつも言うのは、結局、その時期だったんだよ、っていうことですね。
最初に意図した時にできなかったことには、できなかった理由があった。それは物理的な問題だけではなくて、結局いまだったんだよ、やっぱりね、っていうこと。

 いきなりパッとできるものがあれば、頓挫を重ねながらできあがる作品もある。ちゃんとそこにあるものは、その時期に作られるべきものだった。僕はそう思っています」

ーー今後、佐藤さんの中でやりたいことというか、ご自身で変えたいものというか、そういったものがあったりしますか。

「変えたいものは、あんまりないな。あー忙しいやだやだ、って言いながら忙しくしたくもないし、でも休みすぎるとボケるしね。難しいんですよ」

ーーいまいちばんしたい、ということはありますか?

「なんだかんだいって、やらせてもらってますからね。音楽をやったり、趣味の遊びのゴルフも、自分の中で思った通りにやってますからね」

ーーゴルフはどれくらいの頻度で行かれてるんですか?

「週1週2くらいです。僕は同じ業界にいる人間とほとんどやらないんで。異業種の方ばっかり。そっちのほうが楽しいです。
 いや、話を聞いてるとおもしろいよー。ネジを見て、それは圧着だな、とかね。片方だけ溶かしてそこに溶かしてない方を入れてつけるのは溶着っていうんです。飲食の人たちに、キッチンの仕入れ事情とかよく聞きますね」

ーー最後に、佐藤さんに、私のTHECHANGEはなになにです、と言っていただく場合、どんな言葉がふさわしいでしょうか。

「やっぱり、作品、人との出会いということでしょうね。その時は気づかなかったものが後になって気づくこと。チェンジって、その時に気づけたら、それはたぶんチェンジではないんですよ」

■佐藤浩市 さとう・こういち
1960年12月10日生まれ。多摩芸術学園映画学科に在学中の1980年、NHKドラマ「続・続事件 月の景色」で俳優デビュー。『青春の門 自立篇』(82)で映画初主演。以降、映画ドラマへの出演多数。『忠臣蔵外伝 四谷怪談』(94)『64 ロクヨン 前編』(2016)で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。
2022年のNHK大河『鎌倉殿の13人』での「上総介(かずさのすけ)」の壮絶な生き方死にざまは、多くの人の記憶に残る。
父・三國連太郎とは「人間の約束」(86)、「美味しんぼ」(96)、「大鹿村騒動記」(11)で共演。17年に俳優デビューした長男・寛一郎と『一度も撃ってません』(2020)、『せかいのおきく』(23)で共演。2023年は横浜流星と共演の主演作『春に散る』を筆頭に9本もの出演映画が公開される。
また音楽活動としては、10月7日に恵比寿ザ・ガーデンホールにてライブ『役者唄』を開催。

●映画『春に散る』
不公平な判定で負けアメリカへ渡り40年振りに帰国した元ボクサーの広岡仁一は、同じく不公平な判定で負けて心が折れていたボクサーの黒木翔吾と偶然飲み屋で出会う。仁一に人生初ダウンを奪われたことをきっかけに、翔吾は仁一にボクシングを教えて欲しいと懇願。やがて2人は世界チャンピオンを共に⽬指し、“命を懸けた”戦いの舞台へと挑んでいく。
監督:瀬々敬久
原作:沢木耕太郎「春に散る」(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
出演:佐藤浩市 横浜流星
橋本環奈坂東龍汰 松浦慎一郎 尚玄 奥野瑛太 坂井真紀 小澤征悦片岡鶴太郎 哀川翔
窪田正孝 山口智子
配給:ギャガ
©2023映画『春に散る』製作委員会
8月25日(金) 全国公開
公式サイト gaga.ne.jp/harunichiru