作編曲家として小泉今日子、中山美穂、郷ひろみ、光GENJIなどの昭和のトップアイドルから平成のAKB48まで、誰もが知る人気シンガーに楽曲を提供する一方で、自身もアーティスト活動を展開してきた井上ヨシマサ。作家活動40周年を迎えた“ポップスの魔術師”の知られざる「THE CHANGE」に迫った!【第2回/全2回】

井上ヨシマサ 撮影/河村正和

 次の転機は、2005年にやってきました。当時の僕は米国に活動拠点を移す準備をしていたのですが、渡米する直前に作詞家の秋元康さんから連絡をいただき、その頃、秋元さんがプロデュースを始めたAKB48の曲を書いてほしいと依頼されたのです。90年代、あるプロジェクトで秋元さんとご一緒した僕は、いい楽曲を作りたい一心で、生意気にも「自分はお金を稼ぐ手段として音楽をやっているわけではありません」と申し上げたのですが、きっとその発言を覚えていらしたのでしょう。

 秋葉原の劇場で活動を始めたばかりで、メジャーデビューもしていなかったAKB48のプロジェクトに僕を指名してくれたのです。

 そのお気持ちが嬉しくて劇場に行ったら、秋元さんが本気で取り組んでいることが伝わってきました。そして、「世界への発信は、サブカルチャーの聖地として注目されていた秋葉原からもできるのではないか」と、お受けすることにしたわけです。

 おかげさまでAKB48に書いた曲は彼女たちの初ミリオンとなった『Beginner』(10年)や日本レコード大賞を受賞した『真夏のSounds good!』(12年)、柏木由紀さんの卒業シングルとなった『カラコンウインク』(24年)など多くの楽曲がチャートの1位を獲得しています。

 秋元さんも僕も、曲づくりでは一切妥協しないので、AKB48に関しては納得している作品ばかりです。僕は作曲・編曲だけでなく、ミックス(録音された各トラッキングの音量バランスや音色などを調節する作業)やマスタリング(音質・音量・音圧などを最適に調整し、作品全体の完成度を高める音楽制作の最終工程)まで自分でやっていますので、音に関して少しでも気になる点があれば納得するまで直します。