創作で心がけていること「コンペに勝つことやセールスを気にすると、邪念が入ってリアリティがなくなります」

 創作で心がけているのは、自分の体験に基づくリアルな思いを込めること。コンペに勝つことやセールスを気にすると、邪念が入ってリアリティがなくなります。そういう作為は見抜かれますから、リスナーにも伝わりません。だから、ふだんから心が動いたときに曲を作る。頼まれて書くときも、そうした感情を思い起こすようにしています。

 作家活動40周年を記念したプロジェクトでは3枚のアルバムを制作しました。第1弾『Hello Again〜再会〜』では小泉今日子さん、中山美穂さん、郷ひろみさんなど、過去に楽曲を提供した方たちとのコラボが実現。第2弾『井上ヨシマサ48G曲セルフカヴァー』ではタイトルどおりAKB48グループに提供した曲をカバーしました。

 今回、発見したのは、いつからか無意識に「自分が歌う曲ではない」と考えるようになっていた、他の方へ提供したポップスが意外とすんなり歌えたこと。だいぶ遠回りをしましたが、作家活動の入り口で田村さん(井上さんが参加したテクノポップユニット『コスミック・インベンション』ディレクターの田村充義さん)から言われたことに向き合うことができました。

 40周年プロジェクトのファイナルを飾る第3弾アルバム『Y‐POP』はCMで長くオンエアされていた「それぞれの夢」の最新バージョンを含む全曲オリジナル。今の井上ヨシマサなりのポップチューンで構成していますので、ひとりでも多くの方に楽しんでいただけたら嬉しいです。

井上ヨシマサ(いのうえ よしまさ)
1966年、東京都生まれ。81年テクノバンド『コスミック・インベンション』のキーボーディストとしてデビュー。85年より作編曲家として小泉今日子、中山美穂、AKB48などあまたの歌手に作品を提供する一方で、自身のアーティスト活動も展開。東京2020 聖火リレー公式BGMも手がける。大阪芸術大学客員教授。

井上ヨシマサ『Y-POP』
作家活動40周年アルバムの第3弾。さまざまなメロディやサウンドと、磨きのかかったボーカルが楽しめる。タイトルには常に形を変える ポップスという怪物に対峙してきた井上が遂に決着をつけるという意味合いが込められている。