「何も言えない風潮」への違和感! 妥協せず“NO”と言える現場の心地よさ

「この数年で何も言えない風潮の世の中になり、本来の人間の姿と違う方向にどんどん進んでしまっている気がしているんです。それは小さいことかもしれませんが、先輩たちからここには書けないような話を聞いて“ああ、そうですよね”と言い合う仲間たちと撮影していると、意見も言いやすいですし、人間らしく撮れるんですよ。なので、もの作りにおいて率直に意見を言い合える、風通しのいい現場や関係性というのは、すごくいいものだなと改めて思いました」

――仕事もものづくりも、人間同士がやることですからね。

「そうです。やっぱりものを作るのは、みんなで“そうじゃない”とか“もっとこうだよ”と、ああだこうだ言いながらやるものですよ。そういうことを先輩たちと言い合える現場で一緒に作品を作るのは楽しいですし、おのおのが本気でぶつかって作っていこうと思える。すべてを“YES”の中で妥協をしながら進めていくのは違うと思うし、そうじゃないと“ものづくりってどうやるんだろう?”と、どこかで思っている部分が僕の中にありますね。

 今は世情や現状に合わせて“それでいい”と妥協することも多いですが、“本当にそれでいいの?”って思うんです。それに、意見が食い違うからといって、その人を否定するわけではなく、ちょっと違うことを言っているなと思ったときに“それは違うんじゃない?”と“NO”が言えることが大切なんですよね。僕はそういう時代で育ってきたので、今回の現場はすごく心地いい時間でした」

 ベテランの役者さんにインタビューをすると、先輩・後輩の線引きはしっかりと引かれながらも、お互いが本音を言い合って、ときには激しくぶつかりながらもプロとして妥協のないものづくりをしていた頃のお話を聞くことがある。
 そのたびに、私はその当時を経験してきた人たちの話をもっと聞きたいと思う。「温故知新」という言葉があるが、この先の日本のエンターテイメントのためにも、ものづくりをする人にとって大事なことや向き合う姿勢は、先人たちから学ぶことが多いだろう。今回の北村さんも、当時のことを話すとき、決して嫌な顔は見せなかった。それは当時の「本気のぶつかり合い」から生まれるものを、身をもって実感されているからなのだろうと想像する。次回は、そんな北村さんにとっての「転機」を聞いた。

つづく

北村一輝(きたむら・かずき)
1969年生まれ、大阪府出身。90年から俳優として活動を始め、99年に映画『皆月』『日本黒社会 LEY LINES』でキネマ旬報日本映画新人男優賞などを受賞。その後、多くのドラマ・映画・舞台に出演。近年の主な出演作に、ドラマ『地面師たち』(Netflix)、「御上先生」(TBS系)、『ESCAPE~それは誘拐のはずだった』(日本テレビ系)がある他、2月6日公開の映画『たしかにあった幻』、2月27日公開の映画『木挽町のあだ討ち』26年度前期NHK連続テレビ小説『風、薫る』に出演。

©野田サトル/集英社 ©2026 映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

■作品情報
『ゴールデンカムイ 網走監獄襲撃編』全国にて大ヒット公開中
出演:山﨑賢人、山田杏奈、眞栄田郷敦、工藤阿須加、栁俊太郎、塩野瑛久、稲葉友、矢本悠馬、大谷亮平、高橋メアリージュン、桜井ユキ、勝矢、中川大志、北村一輝、國村隼、池内博之、木場勝己、和田聰宏、杉本哲太井浦新、玉木宏、舘ひろし
原作:野田サトル「ゴールデンカムイ」(集英社ヤングジャンプ コミックス刊)
監督:片桐健滋
脚本:黒岩勉