「僕、がんになりました」
 2017年12月、自身のブログで、多発性骨髄腫という血液がんで「余命3年」であることを公表した写真家・幡野広志。以来、彼のもとには大量の人生相談が届くようになり、それらと真摯に向き合った言葉をまとめた書籍『なんで僕に聞くんだろう。』(幻冬舎)はベストセラーになり、この8月には『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』(ポプラ社)も刊行された。
 死を間近に感じながら、写真家·文筆家として活動を続ける幡野さんの人生の転機、「THE CHANGE」とはなんだったのだろうかーー。【第5回/全5回】

幡野広志 撮影/Yukari Hatano

 スマホやSNSの普及によって、今や日常生活のいたるところで“写真”を目にするようになった。しかし、「いい写真と、悪い写真の違いはなんですか?」と聞かれて、答えられる人は少ない――。

 現在、幡野さんは、『いい写真は誰でも撮れる』という初心者向けのワークショップを開いている。そこで、カメラの設定から、撮影のコツ。そして、被写体との心理的・物理的な距離の取り方まで、写真の撮り方の基本を伝えているという幡野さんに、“いい写真”の条件を聞いてみた。

「“いい写真”って聞くと、ほとんどの人が技術的にうまく撮れた写真を思い浮かべますが、撮影技術が優れているのは“うまい写真”であって、うまい写真は、必ずしもいい写真とイコールではありません。

 いい写真とは“感情が伝わる写真”です。たとえば、歌い方は上手くないかもしれないけど、すごく心に響く曲ってありますよね? 同じように、撮影の技術は優れていないけど、見ている人の心に響く写真があります。撮った瞬間にその人が思った、“きれい”、“すごい”、“おいしそう”、“かわいい”、“おもしろそう”といった感情が伝わってくるものです」