「それぞれの美学がある」漫画家たちとの向き合い方

 ペルソナの使い分けはするが、そのままの自分をぶつけていくようになってきた、という変化の裏には何があったのだろうか。

「たとえば、昔はSNSがなかったので、原稿が遅れがちな作家さんに、締切の日付をわざと早めて伝えたりできたんです。でも、今の作家さんって『脱稿した、やった!』とか投稿したりする。あれが出ちゃうと、もう嘘つけない(笑)。それなら、嘘なんてついてるわけにいかなくなるわけで。そういったことを経て、だんだんとフルオープン、ありのままの自分のほうが正解なんじゃないかって思ってきましたね」

 時代とともに編集者と作家の向き合い方も変わってきたのかもしれない。ところで、『SPY×FAMILY』や『チェンソーマン』など全く異なるタイプの作品を同時並行で進める林さんにとって、切り替えは意識するものなのだろうか。

「打ち合わせ中は、当然その作家さんとの話になるので特にこれといった意識はないかもしれません。それに、いまお付き合いのある作家さんたちは10年以上のお付き合いのある先生方なので、とくに意識しなくても問題ないですね。打ち合わせの仕方も先生によって違うので」

 ちなみに、作家さんによって打ち合わせのパターンはどのような違いが生まれるのかもうかがった。

「いろいろなパターンがありますよ。めちゃくちゃ細かいところまで話したい人、大枠だけ決めてそれに対するリアクションが欲しい人など様々です。打ち合わせ以外にも、たとえばアニメ制作について細かいところまで全部しっかり見たい人もいれば、全部お任せします、という方もいて、それぞれの美学がある。それをどう拾うのが適切なのか、そこはかなり人によって違いますね」

 積み重ねてきた経験値と、作品への嘘のない向き合い方。林さんが編集者としての道のりの中で得たもの、そして“CHANGE”の瞬間についてもうかがった。

<書誌情報> タイトル:『9人の「超個性」プロの新仕事論』 著者:林士平 発売日:2026年3月30日(月) 判型:四六判 価格:1,800円(税別) 発売:双葉社
購入:https://www.futabasha.co.jp/book/97845753206330000000