本格的なブームを実感

――分かりやすさもありますが、雨穴さんの作品には斬新なアイディアが散りばめられていますよね。たとえば、『変な絵』では、とある奇妙なブログを見つけることから物語がスタートしますが、そのブログがネット上に実在しているといったサプライズが仕掛けられていて、大きな話題を呼びました。

「ありがとうございます」

――そういった架空と現実の世界を地続きにさせたり、境目をあいまいにさせたりする演出という点では、ドキュメンタリー風の映像表現をした“ホラーモキュメンタリー”というジャンルが思い浮かびます。近年、流行の兆しを見せていますが、いかがですか?

「私も以前から流行っているなと感じていましたが、小説投稿サイト『カクヨム』に投稿された、背筋さんの『近畿地方のある場所について』という作品が、ネット界隈ですごい話題になっているのを見たときに、本格的なブームが到来したなと感じました」 

――なぜ、ホラーモキュメンタリーが流行っているのでしょうか?

「その作品やジャンルを懐かしいと思う世代と新しいと感じる世代、2つの世代ができることで、はじめて大きなブームになります。その点でいうと、かつての掲示板サイト『2チャンネル』で流行した“実話風怪談”に慣れ親しんだ世代が、現代風にアップデートされたホラーモキュメンタリーに惹かれているんだと思います。そして、実話風怪談を経験してない世代は、まったく新ジャンルのホラーとして楽しんでいるのではないでしょうか」