知らない、じゃダメなんだな

 鈴木さんは真っ青になりながらも、ただただ文字を追った。棒読みで。「逃げたい、早く帰りたい。早く今日という1日が終われ」、その一心だったという。

鈴木「私、主演なんですよ。みんなの空気が止まりましたよね。“あ、ヤバい。大丈夫か?”って。それはそれは、忘れられない1日になりました。

 それから数年後に千原兄弟に会ったとき、言われましたもん。“あみ~ゴの本読み、ひどかったで!”って」

ーーそういう日は、家でどんなふうになりますか?

鈴木「いやもう、すっごく悔しかったですよ。その日から、“知らない、じゃダメなんだな”と、考えを改めました。与えられたものはできて当然なんだ、だからちゃんと勉強しなきゃいけないんだ、と」

 悔しさにふさぎ込むばかりではなかった鈴木さんの向上心は、ほかの初仕事でも発揮されていた。そんなひとつが、1998年10月から2001年3月まで放送されたラジオ『鈴木あみ RUN!RUN!あみ~ゴ!』(ニッポン放送)だ。

鈴木「いきなり30分間1人でしゃべるという仕事で、このときも最初は全然しゃべれないわけですよ。でも“できない、じゃ済まされない”と思って、ほかの人のラジオを聴いたりして勉強しました」

ーー主に誰のラジオを聴いていましたか?

鈴木「レボレボですね。TM Revolution。構成作家さんも同じだし、レボレボとはしょっちゅう共演していたから仲が良くて、『西川貴教オールナイトニッポン』(ニッポン放送)を聴いてみたら、これがめちゃくちゃ上手で。すっごいしゃべれるじゃん、みたいな。それから、“はっちゃけよう。恥ずかしいと思うのはやめよう”と思えたんです。レボレボは私にとって先生ですね」

 あみ~ゴの変化の背景に、TMRがいたーー。定期テストの勉強の合間にそれぞれのラジオに熱中していた当時の学生たちが知ったら、興奮を禁じえないエピソードではないだろうか。

■鈴木亜美(すずき・あみ)
1982年2月9日生まれ、神奈川県出身。1998年2月、オーディション番組『ASAYAN』(テレビ東京系)の『ボーカリストオーディション・ファイナル』で1位となり小室哲哉プロデュースで歌手デビュー。シングル『white key』や『BE TOGETHER』、アルバム『SA』や『infinity eighteen vol.1』などで大ヒットを記録し、ヒットチャート常連歌手としてメディアを席巻。現在は3児の母としてSNSで飾らない育児を発信中。バラエティ番組では激辛女王として再ブレイクし、25周年の今年は新曲『I just feel good(Prod.TeddyLoid)』をリリース。