小説家・吉本ばななの作品は多くの読者から親しまれている。1987年のデビュー以来、著作は全世界で30か国語以上に翻訳され、映像化作品も多数。国語の教科書にも作品が掲載されており、いまも10代、20代の若い読者の心を揺さぶっている。そんな吉本さんの「THE CHANGE」を深堀りした。【第3回/全5回】

吉本ばなな 撮影/湊亮太

 吉本ばななが『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞してから36年。現在も幅広い読者から支持をうける吉本さんは、ネットも使いこなしている。

「インスタは海外の読者のため、ツイッター(現・X)は告知と自分がいいと思ったものを人にシェアするため。noteは有料にすることによって、いろんな言いにくいことを言いやすくするために使っています」

 吉本さんの著作は30か国以上で翻訳されている。「この間、ジョージアの大使館の人と会ったら、本当にふつうにさらっと感想をおっしゃるので、“そうかちゃんと届いているんだな”と」と語る吉本さんから、優しい笑みがこぼれた。

――たとえば、海外旅行に行った先で「吉本ばななだ」と気づかれたことはありますか?

「旅行に行った先だと、イタリアでは気づかれたことがありますね。東洋人、日本人、吉本ばななだみたいな順番でよく気づかれます。ただ、声をかけられるとかではなく、気づかれてるな……ってぐらいなんですが」

 そんな吉本さんは、とある「CHANGE」を実感していた。

「最近、若い人にめちゃくちゃ声かけられるんです。それこそ下北沢でとか。ほんとうに最近渋谷で2回、それぞれ別の20代くらいの人から声をかけられて。すごくびっくりしました。“あなた、だって何歳ですか?”と思って。

 “吉本さんですよね”、って声をかけられて。ひとりは小説家になりたいから、今日は会えて嬉しかったとか。で、いつか小説家になったらあの時の僕ですちゃんと伝えます、とかすごく礼儀正しい子でした。

 もうひとりはもっと若くて、いつも読んでますって言ってて。あの子たちは、たぶんインスタで知ってくれたんだなと思いますね」