「こんな男はいない」って言われた
吉本さんは「私が作家になったころは、声をかけてくれるのはやっぱり基本的に女の子ばっかりだったんですね」と語り、ひと息ついて話し続けた。
「そのときは色んな人に“こんな男はいない”ってすごい言われて。私の小説に出てくるようなこんな男、この世の中にいないだろう……といった反応があったんですが、実際、今の時代になってみたら、男の子って私の小説に出てくる子みたいな見た目の子が多い。そして私に気づいて声をかけてくる子もみんな男の子だから、“もしかしてそういう時代になったのかも”と思いました」
――どういった部分が、当時“こんな男はいない”と反応した人がいた理由になったと思いますか?
「やっぱり初版が出たときの時代ですから、いろいろ抽象的なことを話したりとか、そういうのが違うと思ったのかな。あとマッチョじゃない感じの男性像とか」
――今回の『はーばーらいと』のように主人公の男の子・つばさがいて、ヒロインのひばりがいて……という構造は吉本さんの作品において一貫しているように感じますが、そういったキャラクターの造形を行う理由はなんでしょうか?
「実際の話を書いているのではなく、基本的に寓話とかそういうものなので、必ずいなきゃいけないものたちですよね。
民話や昔話に、おじいさんとおばあさんが絶対いるみたいなのと同じ感じで、あんまり現実の物語を書いているというんじゃなくて、作品のテーマに合わせた寓話みたいなものを作っているイメージです」