「僕自身、全部の仕事が今も残っていますし、ブームではなくて、ずっと続いているんです
そして質が変わったといいつつ、その熱気は昔からすごかったと、あるエピソードを振り返った。
「かつて日本橋三越の屋上で、『宇宙戦艦ヤマト』の主題歌を歌うささきいさおさんがチャリティイベントをやったある年末、2000人ぐらいが集まったんです。屋上ですよ。とにかく満杯。徹夜組もいて。そこに“神谷明さんです”と呼ばれて、“キャー!”って大歓声があがって。もう怖くって、たじたじ(笑)。それが最初ですかね。
当時はアニメ歌手のみなさんにファンの方がたくさんついていたんです。そこに僕らがゲストとして呼んでいただいて一緒にイベントをやって、そこから個へと走っていったんです」
神谷さんの声優業に留まらない「CHANGE」もここから始まっていった。
「そこから“レコードを出さないか”と声をかけていただいて、“え?いいんですか?”と。考えてもみなかったことが実現して。出せばステージに立つことになるし、コンサートもやるし、ラジオ番組でも取り上げられてDJもやって、文筆にまでと、どんどん広がっていきました。
個人的なステージイベントも、中尾隆聖さんや井上和彦さん、水島裕さんとかもね、新型コロナの前までずっとやってましたし、和彦くんは今もライブを続けててキャーキャー言われてますから。僕も嬉しいです。“おお、和彦、頑張ってるわ”って(笑)。最初からうねりはあったし、僕自身、全部の仕事が今も残っていますし、ブームではなくて、ずっと続いているんです」
若手の台頭を、目を細めて喜び受け入れる神谷さん。同時にそこには、パイオニアとして、また現役としてのプライドを強く感じさせる姿があった。
神谷明(かみや・あきら)
1946年9月18日生まれ、神奈川県出身。冴羽商事代表。日本を代表するレジェンド声優のひとりであり、歌手、ナレーター、タレントなど幅広く活躍している。1970年に劇団「テアトル・エコー」に入団。声優として活躍中の所属俳優が多かったことから、声優としての活動を開始した。北条司による同名漫画をアニメ化し、87年よりテレビ放送がスタートした『シティーハンター』で演じた冴羽リョウを、自身でもっとも好きなキャラクターと公言する。2023年9月8日より『劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)』が公開中。