プロの洗礼はネタ以外の部分で
――真空ジェシカのように大学から事務所ではなく、なぜNSCに入ったんですか?
くるま 各事務所が学生芸人のリクルートに力を入れている時期で、いくつかお誘いはあったんですけど、面白い先輩なのに「クビになった」「仕事がもらえない」という話を聞いて怖くなったんです。「吉本はクビにならない」という噂を聞いていたので、続けることができるならとNSCに入りました。1年目で売れてやる、じゃなくて、芸人を続けたかったんです。
――NSCの同期にヨネダ2000がいます。当時から売れると思っていましたか?
くるま いまみたいになるとは思ってなくて。誠なんて本当に小さかったから。
ケムリ 赤ちゃんみたいだった(笑)。
くるま もっと即戦力だろうなという同期は何人もいたんですけど、そいつらはうまくいかなくて。ヨネダが売れたのは意外でした。
――お二人は2018年にM – 1グランプリで準決勝に進出したことで注目されますが、学生芸人というレッテルが邪魔になったことはありますか?
くるま 僕らがプロになった頃は目の敵にしてくる方もいて。○○○○の○○○○とか。
ケムリ ハッキリ言わなくていいよ(笑)。
くるま 雑誌に名前を書いてもらったほうがいいんじゃないの?
ケムリ そんなことないから。
くるま 学生芸人で失礼な奴がいて嫌な思いをしたから、「また鼻につく奴がきた」というレッテルが貼られていた時期があって。まぁまぁダルかったです。それ以上に、学生時代からの知り合いがいて、お客さんも呼べるというプラスのほうが大きかったです。吉本所属になって最初のライブで、お客さんが100人来てくれましたから。
――アマチュアとプロの境界線はなんでしたか?
くるま 「学生お笑い」はめちゃくちゃなネタが多かったんです。ひたすらダンボールをぶっ壊すだけ、とか。僕らはそのセンスがないので、普通の漫才やコントをやっていたんです。それが逆に新鮮でウケて。そのネタがプロにも適用できたので、境目を感じることはありませんでした。好きな芸人のときだけ笑って、ほかの芸人には笑わないお客さんがいるとか、ネタ以外の部分で洗礼はありましたけどね。
ご飯に行ったり、草野球に顔を出したり、そのほうが先輩にかわいがられて、SNSで一緒に写るとファンも受け入れてくれる。「結局、一般の企業と同じなんだ」とちょっと冷めて。当時は「くだらないな」と思ったけど、いま考えたら、「知ってる芸人のほうが面白い」という当たり前のことなんですよね。
高比良くるま(たかひら くるま・左)。1994年9月3日生まれ、東京都出身。
松井ケムリ(まつい けむり・右)。1993年5月29日生まれ、神奈川県出身。
2017年7月、慶應義塾大学お笑い道場O-keisの先輩後輩で結成。東京NSC23期を首
席で卒業。2019年5月1日に魔人無骨から令和ロマンに改名。現在、神保町よしもと
漫才劇場に所属している。