「どういう音を発するのかが見たい」という言葉

「以前、正気を失う役を演じたときに、“正気を失ったことがないからわからないな”って、すごい悩んで、“どういうこと?”って聞いたことがあって。監督からは、“いや、僕たちも正気を失った世界なんてわからない。ただ僕たちが見たいのは、あなたが悩んで悩んで、どういう音を発するのかが見たいから悩むしかない”って言われたことがあるんです。

 今回もそうだなというか、正解はわからないけど、原作者である丹野さんの、試写が終わった後の表情を見て“よかったのかな”と思いました」

「どういう音を発するのかが見たい」という言葉が、役者としての「THE CHANGE」につながっていったということだろう。

 39歳で若年性認知症と診断された晃一の妻・真央を演じるにあたって、貫地谷さんは「“とにかく明るい奥さんを演じてくれ”ということを監督からも言われて、“なるべく前向きに”という感じでやってきました」と明かす。

「あとは、丹野さんの本にある通り、認知症の本人のサポートを全部やってあげることが正解じゃないんだなということも、この役と一緒に成長していったらいいな、という感じで演じていました。

 私はこの映画がすごくファンタジーに思えるくらい優しいなと思っていて。試写会が終わって、丹野さんが号泣されていて、“そのままだ”と言ってくださっているのを見て、こんな世界が本当に現実にあるんだ、すごい素敵だなと思いました」

 ドラマ、映画、舞台、声優と活躍する貫地谷さん。この先演じる役では、どんな「音」を聞かせてくれるのだろうか――。

■貫地谷しほり(かんじや・しほり)
1985年12月12日生。東京都出身。02年『修羅の群れ』で映画デビュー、その後07年のNHK連続テレビ小説『ちりとてちん』でヒロインを務め、好評を博す。13年主演映画『くちづけ』(監督:堤幸彦)15年『女くどき飯』(TBS系)、23年NHK『大奥』「8代・徳川吉宗×水野祐之進編」など、その出演作は多岐にわたる。23年には第17回声優アワード外国映画・ドラマ賞を受賞するなど、声優・ナレーターとしても活躍している。

■映画『オレンジ・ランプ』
6月30日より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー
配給:ギャガ
監督:三原光尋
主演:貫地谷しほり  和田正人 
出演:伊嵜充則 山田雅人 赤間麻里子 赤井英和 / 中尾ミエ

 39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断されたカーディーラーのトップ営業マン・只野晃一は、妻・真央と娘2人と暮らしていた。会議を忘れたり、自宅への帰り道を忘れたりしてしまい戸惑う晃一のサポートを真央はなんでも先回りしてやろうとするが、ある出会いをきっかけに2人の意識は大きく変化。「人生を諦めなくていい」と気づいていく、夫婦の希望と再生の物語。
©2022「オレンジ・ランプ」製作委員会

 

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