一方からの見方だけじゃなく、多面的な見方もある

柄本「その発見ってすごく大きくて。このセリフに、いろんなものの見え方が変わる感覚が集約されている気がするんです」

柄本佑 撮影/冨田望

 画面いっぱいに「雪松図屏風」が広がり、すごみすら漂うこのシーンを、「足し算ではなく、引き算によって豊かなものにしている」と表する柄本さんに、「この作品に出演する前後で、なにかご自身に変化はありました?」と聞いた。

 すると、そのあとに登場する、喜多川歌麿の男女が接吻を交わしながら体を重ねる春画について言及しながら、教えてくれた。

柄本「この女性のお尻も、肌の色を描かずに紙の色なんです。こんなにお尻の立体感があるのに、何も描いていないなんて、すげえなあっていう。むしろ、描きすぎると平面になってしまうのかもしれない。描かないことで奥行きを出すというのが……そういうことは、いろんなことに通じていると思うんです。

 そんなふうに、春画を通して、一方からの見方だけじゃなく、多面的な見方もあるのだな、ということを実感しましたね」

 奥深き春画の世界、柄本さんとともに堪能したい。

■えもと・たすく
1986年12月16日生まれ、東京都出身。オーディションを経て映画『美しい夏キリシマ』(2003年)で主演デビューし、第77回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第13回日本映画批評家大賞新人賞を受賞。2018年には「素敵なダイナマイトスキャンダル」「きみの鳥はうたえる」などに出演、第73回毎日映画コンクール男優主演賞、第92回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞ほかに輝いた。2023年は監督作の短編連作集『ippo』、そして『春画先生』が公開、冬には『花腐し』が控える。