3割ぶん、読み手が逃げることができる場所を作ってあげることが、粋だ
ーー去り際に、かっこよすぎますね。
柄本「本人は覚えていらっしゃらないでしょうけどね、僕にはめちゃめちゃ刺さったんです。その真意はおそらく、“3割ぶん、読み手が逃げることができる場所を作ってあげることが、粋だ”ということなんだろうなと、僕はとらえていて」
ーーそのとき、なにか心当たりがあったんでしょうか。
柄本「そうですね、たしかに自分なりにもちょっと思うところがある芝居で、そこをスッと見抜かれた感じだったからこそ、よけいに刺さったんです」
ーーそれ以降、演じ方に変化があったり?
柄本「そういうところがイコールに繋がらないというところもまた、ちょっとおもしろいんですよね。そう簡単には操作をすることができないというか。
やりすぎずに逃げ道を作る……じゃあ、やりすぎるってなんだろう……じゃあ、やるってなんだろう……じゃあ逆に、やらないって……? と、どんどんわからなくなっていくので、そう簡単に変えられるようなものではないですよね」
追求し続けるからこそ、柄本さんは留まらないのだ。
■えもと・たすく
1986年12月16日生まれ、東京都出身。オーディションを経て映画『美しい夏キリシマ』(2003年)で主演デビューし、第77回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第13回日本映画批評家大賞新人賞を受賞。2018年には「素敵なダイナマイトスキャンダル」「きみの鳥はうたえる」などに出演、第73回毎日映画コンクール男優主演賞、第92回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞ほかに輝いた。2023年は監督作の短編連作集『ippo』、そして『春画先生』が公開、冬には『花腐し』が控える。