ミュージシャンは「リズム感が良すぎる」
映画やドラマに、芝居が専門ではない、歌手やアーティストが参加することも多い。そうしたときに、一緒に芝居をした俳優が普段のリズムとは違って、「面白い」と感想を漏らすことも多いが、オダギリさんは、むしろミュージシャンは「リズム感が良すぎる」と言う。
「俳優以外の人が入って来ると面白いというのは、アーティストの方に限った話ではないです。素人の方でもそうですし、逆にミュージシャンの方は、リズム感が良すぎて、合わせられちゃうので、うまくまとまってしまうことのほうが多い印象です。
その点でいえば、素人の方のほうが面白いですよ。芝居を全く知らない人たちのほうがやっぱり面白いですよね。どうなるかが読めないし。本当の意味でジャズっぽさを感じますよ」
ちなみに、音楽に一番影響を受けたというオダギリさんが、具体的に影響を受けたのは誰になるのか。
「トム・ウェイツとか、フランク・ザッパとかですかね。誰にも真似できない、オンリーワンなクリエイティビティがある人たちに影響を受けました。何かに似ているとか、誰かの真似から始まっているなと感じる人には、あまり惹かれないですね」
それはまさにオダギリジョー、その人に通じる魅力といえる。やはりオダギリさん自身もオンリーワンでありたいと心に留めているのだろうか。
「たしかに、自分自身オンリーワンではありたいですが、でも本来みんなオンリーワンですよね。それぞれがオリジナリティを持って生まれてきているので、変にそれを作り上げることなく、自分らしさを引き伸ばしてあげることが、結果的にオンリーワンになっていくことだと思っています」
己を信じる芯の強さが、オダギリさんのオンリーワンの太さ、魅力として、私たちを惹きつけて止まないのかもしれない。
オダギリジョー(おだぎりじょー)
1976年2月16日生まれ。アカルイミライ』で映画初主演。以降、『メゾン・ド・ヒミコ』(05)、『ゆれる』(06)、『悲夢』(09)、『宵闇真珠』(17)など作家性を重視した作品に出演し、国内外の映画人からの信頼も厚い。19年、『ある船頭の話』で長編映画初監督。第76回ヴェネツィア国際映画祭ヴェニス・デイズ部門に日本映画史上初めて選出され、同年『サタデー・フィクション』(日本公開は11月3日)がコンペティション部門に出品。待機作に「僕の手を売ります」(全10話)がFOD/Amazon Prime Videoにて10月27日(金)より配信開始。
■作品情報
『月』10月13日(金) 全国公開
■出演:宮沢りえ、磯村勇斗、鶴見辰吾、原日出子、高畑淳子、二階堂ふみ、オダギリジョー
■監督・脚本:石井裕也『茜色に焼かれる』『アジアの天使』
■原作:辺見庸
■音楽:岩代太郎
■企画・エグゼクティブプロデューサー:河村光庸
■配給・制作プロダクション:スターサンズ
■制作協力:RIKIプロジェクト
■コピーライト:(C) 2023『月』製作委員会