オタクの青年から正義の勇者、さらには闇金業者やAV監督まで、まったくの別人格を深く掘り下げて演じる山田孝之。幅のあまりの広さから、人は時に彼を“カメレオン俳優”と呼ぶ。声優、監督演出家、音楽活動、青果の生産者など多彩な顔を持ち、すべての活動に全身全霊を傾ける山田さんの「CHANGE」とは、なんだったのだろうか?【第1回/全5回】 

山田孝之 撮影/吉村智樹

姉が雑誌の表紙になって芽生えた「悔しさ」

「人生のCHANGEですか……う~ん」そう言って、じっとこちらを見つめながら少し考え込んだ山田孝之さん。たじろぐほどの視線の強さ。すべての仕事に本気で対峙する山田さんにとって、取材もまた真剣勝負だと捉えてくれたのだろう。

 その山田さんが人生最大の「CHANGE」だと感じた瞬間とは。

山田「僕にとって、すべての時間がCHANGEです。日々、変化の連続ですよ。出会った人、鑑賞した作品、街の風景、すべてに刺激を受け、影響を受けている。自分はつねに変わり続けています。

 ただ、芸能界というカテゴリーだけに関して言うならば、姉の存在が大きいです。あれは僕が15歳のときでした。姉がいわゆる“ギャル”で。ストリートモデルをやっていて、その流れでギャル雑誌の表紙を飾ったんです。

 僕は当時、将来なりたい職業は特になかった。希望や目標はありませんでしたが、雑誌の表紙になった姉を見て、なぜか“悔しい!”という感情が芽生えたんです。“うちの姉ちゃんなんか、普通だぞ。あんな普通の人が雑誌の表紙をやれるんだったら、俺だってなれるに違いない!”ってね」

 山田さんには姉が二人おり、ともに10代の頃、『egg』や『Popteen』などティーン向け雑誌のモデルとして活動していた。ストリートモデルとしてカリスマ視されていた姉の活躍が、まだ何者にもなれていない中学生男子のハートに火を点けたという。