温泉旅館で100万円を渡されて……

──そうは思いませんが、インパクトがあったのは事実です！　今日は、愛人疑惑でブレイクする前のことも知りたいんですが、デビューは３０歳のとき？

保科　「そうなんです、２７歳で上京するまでは、地元の自動車会社でＯＬをしながら歌謡教室に通って、アマチュアとしてミニライブを開催したり、刑務所の慰問に行くこともありました」

──へー！　刑務所にも。

保科　「でもね、あくまで歌は趣味。それが２７歳で、ある作曲家先生と出会って。父が残した借金の返済のメドがついたこともあり、１年間だけ勉強のため東京に出ることにしたんです」

──周囲の大反対にあいませんでしたか？　当時の恋人とか。

保科　「しょうがないね」と送り出してくれました。

──それが、１年ではすまなかった。

保科　「１年間は先生の下で付き人をしながら報酬をもらう生活をしていましたが、周りの人から“ちゃんとプロダクションに入ったほうがいい”と言われて。知人の紹介で、３年目でプロダクションに所属したんです」

──晴れて歌手になったんですね。

保科　「一番鍛えられたのは、デビュー３年目からの仕事。今はもうないホテルパシフィック東京のラウンジで歌っていました。１日３ステージ、お客様は誰も私のことを知らないし、そこでどうやったら歌を聴いてもらえるのかを模索しました。リクエストをいただいたらアカペラで歌うし、トークも台本なしのアドリブでしゃべっていました」

──ハプニングなどは？

保科　「ぎっくり腰になりながら出演したりね。歌っているときはアドレナリンが出るからか痛みはなくて、楽屋に戻ると“あああ！”と絶叫。不思議ですよ。３８度の熱が出たときも、舞台に出ない選択肢はありませんでした。それを１４年ほど続けていましたね」

──１４年！　その間、危ないお客さんと会うことはありませんでしたか？

保科　「デビュー直後にいましたね。みんなでごはんに行った中にいた男性が、とても気前がよく、私と私の友達に“靴を買ってあげる”なんて言い、友達は買ってもらっていました。優しい人だと素直に思って、別日に誘われて行くと、温泉旅館で二人きり。〝そういう雰囲気〟なんです。で、１００万円を渡されて」

──うわあ……雰囲気で分かるんですね。

保科　「そう、ずっとネットリした雰囲気。二度と会わないなら“バカなことしてんじゃないよ！”と言えますが、そうもいかないですから“一人じゃないと眠れないんです”と１００万円も断固拒否しました」

──自伝によると、石田社長との出会いはラウンジだったそうですね。保科さんが各テーブルを回り、社長のところにも来て「よろしくお願いします」と握手を求め、「はい」と答えてしまったからとか。

石田　「つい握手してしまって。こうなったら責任を取らなきゃと思って会社に入れてしまったんです」

■保科有里（ほしな・ゆり）　1961年11月24日、石川県生まれ。地元でのＯＬ生活を経て、１９９３年『神無月に抱かれて』でソニーレコードより歌手デビュー。現在は、「夢グループ」に所属し、コンサート、テレビ、ＣＭなどで活躍中。ＭＲＯ北陸放送ラジオの『保科有里の歌に恋して』（毎週日曜11：00～11：30）は、デビュー以来30年続く長寿番組となっている。公式サイト：https://hoshinayuri.com。