90年代の音楽シーンに颯爽と現れ、ティーンエイジャーを中心に熱狂的なファンの支持を集めた筋肉少女帯。そのフロントメンバーが大槻ケンヂだ。今年メジャーデビュー35周年を迎え、アルバム『一瞬!』の発売、ライブ活動やフェスへの出演など、今なお変わらず精力的な活動を続けている。
 音楽シーンのみならず、エッセイ、小説、DJなど幅広く活動している大槻ケンヂさんの、THE CHANGEを聞いた。【第5回/全5回】

大槻ケンヂ 撮影/川しまゆうこ

サブカルはメインカルチャーに

 大槻ケンヂは『サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法』(白夜書房)を2012年に上梓している。この本が発行された当時と現在では、サブカルはどのように変化したのだろう。

「本当、“サブカル”って言葉自体が出版された当時と意味合いが全く変わってきたよね。今では“サブカル”という言葉が、メインカルチャーになってきている」

 電子書籍やサブスクリプションなど、媒体が紙やCDからデジタルや配信に変わってきた現在でも、表現者がサブカルで食べていくことは可能なのだろうか。

「日本で、餓死するってなかなか難しいでしょう。だから結局は、なんとかなっちゃうと思いますよ。曽我部恵一さん(ロックバンド、サニーデイ・サービスのボーカル)が、“音楽で飯を食いたいのならば、音楽で月にいくら稼ぎたいのか。そこから考えようよ”っておっしゃっていた。

 それを聞いて、なるほどなって思った。でも、僕は好きなことだけしていても、それが自分にとって必要な自己表現であれば、売れるとか売れないとかそれほどには関係ないって思います」

――それでも、売れるまではつらいと思いますが……。

「LAUGHIN’NOSEのCHARMYさんがおっしゃっていたんだけど、“50過ぎたら、全部OK”っていう。僕もここまで生きてきたのだから、グッドタイムもバッドタイムも経験しているし、しょうがないよ!(笑)って思えるようになりましたね」

――人生をそのように気楽にとらえるようになれたのはいつからですか?

「50歳過ぎてからですね。50の壁を越えてからです」

 そんな大槻さんが「チェンジ、変化」という言葉から思い浮かべることをたずねると「良い方向へ転がるということ、です」とにっこり。道なき道を切り拓いてきた大槻さんならではの力強い言葉だった。