サブスクも電子書籍もできることはやったほうがよい

――大槻さんはサブスクリプションや電子書籍など時代の変化を、どのようにとらえていますか。

「僕が思うのはね、サブスクでも電子書籍でも対応できることは対応したほうがいいと思います。この前、雑誌の企画でTikTokユーザーの書評家と、昔ながらの評論家の方による本の評論特集があったんです。今はTikTokユーザーの影響力が強いらしいのですが、彼らと評論家の方との温度差が強烈なんですよ。なんかもう異次元みたいな感じで(笑)。

 若い方たちの“頑張って本を書いている人を悪く言うのはよくない”みたいな風潮も、評論家の方の“評論とは何であろうか。侍である”みたいな論議も、どちらとも正論だと思うんです。だからこそ、両方をすり合わせつつ、つねに受け手側もやっぱり意識の転換もしていかなきゃだめかなって思っています」

 小説と同様に、大槻さんの音楽についてのスタンスも柔軟だ。

「僕がバンドをやっていても、新しいものってそんなに入ってこないんです。若い人に聞くとみんなサブスクだけじゃなくて、今はTikTokで曲を聞いているんだよね。TikTokもYouTubeも熱心に観ていないし、誰かが再生数世界1位になってもわからない。だからね、もういいやって思ったんです(笑)。思ったんだけど、勉強しないとね、がんばってついていこうとしてでも若い人たちや、頑張っている人たちは応援しないといけないって意識しています」

――今は消費のスピードも速くなっています。そのような中で、大槻さんが印象に残ったものはありますか?

「若い人たちの音楽はみんなすごいので、勉強しないといけないなって思っています。最近はたまにだけどボカロなんかの動画を観ています。言葉のチョイスが昔と全然違うんですよ。面白い。“そういう言葉を使うんだ~”みたいな発見がありますね。ボカロだと『ピノキオピー』(2009年から活動している音楽家)さんかな。歌詞とか面白いなって感心しました。

 あと男女で分けるのは古いってわかっているのだけれど、やっぱり女性アーティストの演奏が上手くなりましたよね。Gacharic Spin(2009年結成のガールズバンド)は、テクニカルですごいな~って思いました」