音楽以外の活動の原動力とは

『グミ・チョコレート・パイン』、『リンダリンダラバーソール』など数多くの著作を発表している大槻さんだが、意外にも文章を書く原動力はコンプレックスからきているという。

「僕の表現活動は、コンプレックスからきているんです。音楽も学んだこともないし、周りが天才ばかりなのに、僕は下手なギターしか弾けない。だから音楽活動に対するコンプレックスが強いんです。その反動からタレント活動をしたり、小説を書いたりしているのかもしれません」

大槻ケンヂ 撮影/川しまゆうこ

――今でこそミュージシャンが小説を書いたり、テレビに出演するのは珍しくなくなりましたが、音楽以外の活動も続けてこられた理由はありますか?

「やはり自分が根本的な音楽家ではないというコンプレックスがあるからだと思います。根本的には音楽畑の人間ではないっていうのがわかるんです。そのコンプレックスが、音楽以外にも自分に向いているものがあるのではないかという“自分探し”に繋がっている。でも恥ずかしい言葉ですよね、自分探しって。

 僕は、本当に音楽の才能がありながら脚光を浴びていない天才を沢山見てきた。そういう人たちに対する申し訳なさも少しは抱いているんです。結局、音楽に対するコンプレックスから、いろんなことを始められたんだと思いますね」

――ちなみに小説やエッセイと歌詞の執筆において、どういった違いを感じますか?

「けっこう重要で具体的なことをいうと、一番大きいのは文字数制限ですね。歌詞には文字数がある。それは創る上でとても大きな違い。筋肉少女帯の歌詞も文字が多いけれど、今の若い人たちが作る音楽はとてつもない文字量ですね! それに比べれば、僕の歌詞なんて言葉数が少ないって思います」

 長年さまざまな作品を手掛ける上で、意識していることは何なのか。

「文章を書く時は、自分だけが知っていることを誰もがわかるように書く。シンプルだけれど、それは大事にしないといけないって肝に銘じています。でも書きものって、長くやっているとそれなりに面白く手癖で書けちゃうんですよ。でも、“そうじゃないんだ”って立ち止まる。“本当に面白いから伝えたい”っていう気持ちがそこにないと、さらに面白くはならないんです」

 コンプレックスをバネに、自己表現につなげていく。つねにシーンの第一線で活躍し続けている大槻さん。その姿勢は、これからもあらゆる世代に影響を与えていくことだろう。

大槻ケンヂ(おおつき・ケンヂ)
 1966年2月6日生。東京都出身。82年よりロックバンド・筋肉少女帯の活動を始め、88年にメジャーデビューを果たす。同年、『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)のパーソナリティに就任。90年〜94年にはバンドで単独武道館公演を行うも、99年に筋肉少女帯の活動が凍結。07年に活動を再開し、最新作にベストアルバム『一瞬!』など。ミュージシャン、作家、エッセイスト、タレントとして幅広い活躍をしている。

​■筋肉少女帯 2023ライブファイナル
12/23(土) 東京 恵比寿 LIQUIDROOM
OPEN 17:00 / START 18:00 All Standing
Support member Pf.三柴理 / Dr.長谷川浩二
Ticket 前売 8,800円 (税込/drink別)