監督よりプロクラブの経営をしてみたい

 いずれは指導者として、例えば浦和レッズの監督に復帰する可能性を尋ねてみた。浦和レッズの”レジェンド”と言われる以上、復帰はありうるかもしれない。

「監督? そんな大変な仕事はしたくありません、いや、冗談ですよ……(笑)。監督になるためには、S級ライセンス(日本サッカー協会が公認する指導者の免許制度の中で最高位の指導者資格)をとる必要がありますが、僕はそれを持っていない。今はプロとして指導をしたい、とは思っていないから。機会があれば、子どもたちには教えたいです。Jリーグの監督は、きっとすばらしい仕事でしょうね。選手を育て、チームをつくり、勝つことができれば、ものすごい喜びも感じるでしょう。

 だけどむしろ、監督やコーチ、選手たちを支える側にいたいのです。その1つとして、プロクラブの経営をしてみたい。練習や試合などサッカーをしている『オン・ザ・ピッチ』だけが、サッカーじゃないですから・・・。『オフ・ザ・ピッチ』も重要。プロクラブは、エンターテインメントとしては十分な要素がある。だから、試合ではあれほどに盛り上がる。それも大切なのですが、プロクラブは地域のセンターピンであり、中心的な存在になってほしいと僕は願っているんです。

 たとえば、土曜日が試合ならば1週間のうち、その日が最も盛り上がるかもしれない。ほかの6日間も、クラブは人々がサッカーとふれあい、わくわくして楽しむ、健康的な生活を送ることができないかな、と思うんです。試合の日、皆さんの満足を最大化させるためには、ほかの日の満足感を高めることも大切。そのためにも、コミュニティづくりが必要になります。ベンチャー企業の経営に関わるようになった理由の1つは、このあたりにもあるのです」

 夢を次々と実現できるのは、広い視野で見据え、地に足のついた考え方ができるからなのだろうか。指導者層にも、ファンが多いのはわかるような気がする。

■鈴木啓太(すずき・けいた)1981年、静岡市生まれ。中学は東海大一中に在籍し、全国中学校サッカー大会優勝。高校卒業と同時に2000年、Jリーグ浦和レッドダイヤモンズ(浦和レッズ)に加入。ポジションは、MF。2006年~2008年は日本代表となり、唯一全試合に先発出場。2015年に引退するまで、16年間浦和レッズで活躍。
 2015年には腸内細菌の可能性に着目し、腸内フローラ(腸内細菌の生態系)解析事業を行う研究開発型のベンチャー企業・AuB(オーブ)株式会社を設立。45競技1000人を超えるトップアスリートの腸内を研究し、酪酸菌など約30種の菌を配合した、腸内環境をケアするサプリメント「aub BASE」と、プロテイン「aub MAKE」を開発・販売をする。
 トップアスリートの腸内の分析データから独自の特徴を発見し、製薬会社や食品メーカーとの共同研究や自社製品開発を行う。スポーツ、ヘルスケアビジネスの分野でもコンサルティング、講演を続ける。2020年10月からは、YouTubeチャンネルを開設。チャンネル登録者数は2023年11月現在、25万を超える。