ここから30代……という決意と挑戦

 親が決めた夫と愛のない結婚生活を送る最中、夫の上司と初めての恋に落ちる。戸惑いながらも性愛に深く没頭してゆく女性という役どころ。大胆なラブシーンをいとわず演じ、話題となった。

村川絵梨 撮影/三浦龍司

「ここから30代……という決意というか、挑戦というか、とてもいい作品に出会えたなと思っています。個人的にも瀬戸内寂聴さんに女性として憧れがあったので、かっこいいな、と。どんな人生を生きていらっしゃったのだろうと、すごく興味深かったので、監督からご指名をいただいたときは、“ぜひ!”と迷わず返事をしたんです」

ーーカメラの前で肌を見せることについて、覚悟もあったかと思います。

「決意は必要でしたね。一応、親にだけは確認したんです。そうしたら、“やりたかったらどうぞ”という感じで。母が初日の舞台挨拶の日に観に来てくれたんですが、観てもらうときはいちばん緊張しましたね。いい家族に巡りあえて、よかったなと思います」

ーーどんな緊張感でしたか?

「完成作品を観たときにとても美しく仕上がっていてうれしかったので、“これならお母さんにも観てもらえるな”とは思っていたんですが、もしそうではなく見えてしまったらどうしよう……という緊張感です。でも母も“キレイだった”と言ってくれました」

 そして「女優憧れの作品」と声を弾ませて教えてくれるのは、2021年放送のNHK大河ドラマ青天を衝け』だ。村川さんが演じたのは、吉沢亮さん演じる主人公・渋沢栄一の姉・渋沢なかだった。

「そこに参加できたことや、信じられない規模のオープンセットを見た瞬間、“またここからがんばらなきゃ”という気持ちにさせられました」

 念願だった大河ドラマ。脚本家は、『風のハルカ』で脚本を担当した大森美香さんだった。

「大森さんと必ず、またご一緒したいと思っていたのですが、大河という場所で叶ったことも特別な気持ちになりましたね」

 巡り巡って立った憧れの場所で、村川さんは大切な恩人との縁を噛みしめるのだった。

■村川絵梨(むらかわ・えり)
2002年、ユニット「BOYSTYLE」のメンバーとして歌手デビューしたのち、2004年に映画「ロード88 出会い路、四国へ」で主演を務め、本格的に俳優業に進出。2005年後期放送のNHK連続テレビ小説『風のハルカ』のヒロインに抜擢される。2008年放送ドラマ『ROOKIES』(TBS系)でマネージャー役を好演。ドラマ、舞台、映画と幅広く活躍している。2023年にはムロツヨシ主演のドラマ『うちの弁護士は手がかかる』(フジ系)で個性的なやり手弁護士を演じた。