人生をCHANGEさせた1本の電話

 そんな中、レコード会社の目に止まりデビューが決まるのだ。1993年3月21日に発売されるデビューアルバム『BACK TO THE TIME』の収録曲10曲を作ると、レコード会社でデビューシングルについての協議が行われた。

「俺は『Goo d ー bye Love Road』という曲でデビューしたかったんですが、多数決で決めよう、と。いちばん多かったのが『Get~』でした。ただ、デビュー曲ってインパクトがないとダメだけど、これはバラードだし、“難しいだろうね”みたいなことは、いろんな方に言われましたね」

 1992年、1993年の年間ヒットチャートを見ると、WANDSやTーBOLAN、DEENらビーイング系ロックバンドの存在が際立つ。

「ちょっとノリの効いたロックテイスト、俺はロック系の方がいいんですけどね。どっちかというと、そっちなんですよ。そっち系でいけたらいいな、と思いましたが、しょうがないですけどね」

 バラードでデビューする男性ソロミュージシャンは希少だったこのとき、山根さんが働きながら土日に音楽活動をしていたのは前述の通りだ。

「土日はキャンペーンで、いろいろなショッピングモールで歌いました。そのうち、大阪のほうの有線でちょっとリクエストが増えてきて。そうしたら、東京の方から”テレビに出ませんか”という電話が来たんですよ」

 この1本の電話が、山根さんの人生を唐突にCHANGEしてしまうのだった。それから30年が経った現在、『Get~』を含むこれまでリリースした30曲を収録したベストアルバム『PIECE OF LIFE』と、10年ぶりのオリジナルアルバム『I AM』を2作同時リリースした。

ーーベストアルバムのほうジャケットビジュアルは、当時の山根さんが、裸にGジャン。かっこいいですね!

「若いですね。20代のときですね」

ーー裸にGジャン、流行っていたんですか?

「流行ってはないです。たぶん、俺のイメージがそういう感じだったと思います。ジーパンにGジャンか、ジーパンに白Tシャツ。私服に近い感じでした。スタイリストさんを何度かつけていただいたんですが、あまりしっくりこなくて」

ーースタイリングは山根さん自身だったんですね。

「という感じでしたね」

 山根さんがふとうしろを振り向くと、ジャケットの背中には、散りばめられたスパンコールでドクロが描かれていた。人柄のよさとのコントラストに、胸を掴まれる。その背中からは、静かに、でも熱く、30年間自らを貫き続けたオーラが放たれていた。

■山根康広(やまね・やすひろ)
1966年8月16日生まれ、大阪府出身。中学生の頃、70年代のアメリカ・イギリスの洋楽ロックに強い影響を受ける。1993年、日本クラウンよりデビュー。デビュー曲『Get Along Together』が180万枚を超えるミリオンセラーを記録。90年代、披露宴ソングとして全国の結婚式で歌われ、現在まで名曲として語り継がれている。

■山根康広(やまね・やすひろ)30年の軌跡を辿るベストアルバム
『PIECE OF LIFE~30TH ANNIVERSARY BEST ALBUM~』
定価:¥3,700
レーベル:日本クラウン株式会社
10年ぶり、通算11枚目のオリジナルアルバム
『I AM』
定価:¥3,300
レーベル:日本クラウン株式会社
●山根康広各配信サイト https://bio.to/yamaneyasuhiro
●山根康広 「Get Along Together -愛を贈りたいから-」 (Official Audio) https://youtu.be/jifqX5yfiNI?si=hl75x_9TAFWaPSIb
●山根康広「WITHOUT U」アートトラック https://youtu.be/KpKalHHnHJY?si=Y2TSESi6OFnAS4gu